2013 Fiscal Year Annual Research Report
〈臨生〉の思想圏に関する教育人間学的研究-自己変容と他者性をめぐる知の技法の解明
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13J05714
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小木曽 由佳 京都大学, こころの未来研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 個別性 / 普遍性 / ユング / 臨生 / 心理療法 / 臨床の知 / 異他性 / 事例研究 |
Research Abstract |
本研究は、「臨床(clinical)」の語が指し示す技法や知のあり方の特徴を、〈臨生〉という語を用いて思想的に問い直すものである。本研究では、"「異他なるもの」を通して「この私が」「この世この生のリアリティ」と出会い直す働き"を〈臨生〉と定義し、こうした〈臨生〉の思想圏に対して次の三つのアプローチ、①〈臨生〉の視座を持つ諸思想の検討、②〈臨生〉の思想圏と現代思想の接点の検討、③心理療法およびケアの領域における基礎理論の検討、から考察をおこない、「臨床」の語が本来有しているはずのダイナミズムやその知の技法を抽出することを最終目的とする。 初年度は、研究計画のうち、①②③すべての課題に取り組んだ。①に関する具体的成果は、ユング(Jung, Carl Gustav)が自らの「個別的」な体験を「普遍性」をもった知の形としていかに昇華させたかという笥いの検討を、論文「ユング心理学と個別性(eachness)の世界―『赤の書』から錬金術研究へ」として、『ユング心理学研究』に投稿し、第6巻に掲載された。また、この内容もふまえ、2014年6月に創元社より出版予定の書籍の原稿を書き進めた。②に関しては、「遊び」の思想との関連において共同研究を進め、「臨生思想と遊びの人間学」との題目にて2013年8月に日本教育学会第73回大会にて口頭発表をおこなった。③については、大学相談室での心理臨床の活動に継続的に従事したほか、発達障害に関する事例検討会に参加し、心理療法をめぐる基礎理論の検討を進めた。発達障害については、共著論文「発達障害へのプレイセラピーによるアプローチ―新版K式発達検査2001を用いた検討」が『箱庭療法学研究』Vol. 26, No. 3に掲載されたほか、2013年10月には「発達障害と診断される子どもの親面接」との題目で日本箱庭療法学会第27回大会にて共同で口頭発表をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
特に研究課題に対するひとつめのアプローチに関して、論文「ユング心理学と個別性(eachness)の世界―『赤の書』から錬金術研究へ」によって、ユング思想を通して検討してきた問いへの考察を当初の想定よりも質的に進展させることができたと考えている。また、その他のアプローチにおいても、共同研究を中心に予定通り進めることができており、順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
予定通り、ひとつめのアプローチについては、文献による思想研究を中心に個人研究を進め、残りのアプローチについては、文献の検討とともに事例検討など臨床実践との関わりから研究を進める計画であり、後者は共同研究を主体とするものである。その他、関連分野の欧米書籍の邦訳等にも積極的に携わるなかで、自らの研究を生かしながら、当該関連研究の内容を伝えていく作業ができればと考えている。
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Research Products
(4 results)