2013 Fiscal Year Annual Research Report
分子認識型NHC触媒の創製に基づくアルデヒドの高選択的分子変換反応の開発
Project/Area Number |
13J05731
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宇野 卓矢 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 有機触摸 / NHC / α位分岐型アルデヒド / 光学活性エステル / 酸化反応 / 動的速度論的光学分割 / NSAID / イププロフェン |
Research Abstract |
外部酸化剤存在下、光学活性なNHC触媒とα位分岐型脂肪族アルデヒドより反応系内で生じるアシルアゾリウム中間体のジアステレオ混合物に対し、求核剤であるアルコールがジアステレオ選択的に付加することで、光学活性なエステルを高い立体選択性で与えると考えた。また中間体のカルボニルα位プロトンは生成物よりも活性であると考えられるので、適切な塩基で処理することで、生成物のラセミ化を抑制しながら中間体のみを選択的にエピメリ化することで、全体としてはアルデヒドの直接的なエステル化と動的速度論的光学分割が達成できると期待した。 はじめに、電子豊富なキラルNHC触媒存在下、α-フェニルプロピオンアルデヒドの不斉エステル化を、種々の塩基及び求核剤を用いて初期検討を行った。その結果、塩基や求核剤が立体選択性に大きく影響することを見出し、特に塩基としてm-クロロ安息香酸カリウム、求核剤としてm-メトキシフェノールを用いる条件で、κ体のエステルを88%収率、82%eeで得ることに成功した。本反応条件は様々なα-アリールプロピオンアルデヒドに適用可能であり、良好な収率及び高いエナンチオ選択性で対応するα-アリールプロピオン酸エステルが最高88%eeで得られることを明らかにした。なお、本反応で得られる光学活性なエステルは、加水分解することで非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に含まれるα-アリールプロピオン酸へと誘導可能であり、その一例として(R)-イブプロフェンエステルを過酸化リチウム水溶液に付すことで、(R)イブプロフェンが不斉収率を損なうことなく得られることを明らかにしている。エナンチオ選択性に関しては依然改善の余地があるものの、本反応はアルデヒドの酸化的分子変換と触媒的動的速度論的光学分割を組み合わせた初めての例である。また、解熱鎮痛薬として広く用いられているNSAIDsへと容易に変換可能なα-アリールプロピオン酸エステルを、高い立体選択性で得られる点で有用である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初想定していた通り、光学活性なNHC触媒を用いることで、α位分岐型脂肪族アルデヒドの動的速度論的光学分割が進行すること、NHC触媒や酸化剤の電子密度が立体選択性の制御に重要であることを明らかにすることができた。しかしながら、推定される反応機構に基づいた分子認識型の新規NHC触媒の創製及び反応のタンデム化には、未だ成功していない。
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Strategy for Future Research Activity |
塩基や求核剤、溶媒、温度などについて詳細に検討を行った結果、反応の立体選択性は最高88%eeまで向上することができたが、NSAIDs合成への展開を視野に入れると充分な選択性とは言えない。そこで、さらに選択性を改善させるためには、反応機構に基づいた新規NHC触媒の創製が必要と考えている。推定される反応機構において、安息香酸イオン、フェノール及びアシルアゾリウム中間体の三成分が関与する遷移状態を経て生成物の立体化学が決定されていると推察しており、カルボン酸部位をNHC触媒内部の適切な位置に配置することで、反応遷移状態の安定化と立体選択性の向上が期待できる。そこで量子計算化学的手法を用いて反応遷移状態を推定しながら分子認識型NHC触媒の設計・合成を行い、エナンチオ選択性の改善と基質適用性の拡大を目指す。続いて、中間体を求電子剤により捕捉することで、四置換不斉炭素構築へと展開する。中間体における反応点の近傍に求電子剤を配置することで所望の炭素-炭素結合形成を促進することができると考えており、触媒の分子内部に求電子剤を認識できる官能基を有する不斉NHC触媒を創製し、イミンやマイケル受容体を求電子剤として用いる種々の検討を行い、触媒活性の評価と二連続不斉中心を有するカルボン酸誘導体の一挙構築を目指す。
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Research Products
(3 results)