2013 Fiscal Year Annual Research Report
小型の蝶ヤマトシジミ北限個体群において出現した色模様変化型の環境適応と進化
Project/Area Number |
13J05743
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
檜山 充樹 琉球大学, 理学部, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ヤマトシジミ / 色模様変化 / 北限個体群 / 低温耐性 / 行動実験 / 継代飼育 |
Research Abstract |
本研究における目的は、鱗翅目シジミチョウ科の小型の蝶であるヤマトシジミを用い、その北限個体群において多数確認された翅の色模様変化型の出現過程を探るというものである。その目的のため、1、野外個体における色模様変化の遺伝性、2、色模様変化と低温耐性の同時進化、3、色模様変化における不利益の有無という3つの視点から研究を進めてきた。 今年度の実験として、まずヤマトシジミの雄による雌の配偶者選択時における、変化型の色模様を持つ雌の不利益性の有無を検証するために行動実験を実施した。雄個体に対し色模変化型と有無変化型の2種類の雌個体を同時に提示し、どちらの個体に対しより多く交尾行動をとるかという実験を通し、交配時における色模様の重要性を探ることを試みた。その結果、雌の色模様変化型は雄にとって正常型と同程度の交尾対象であることが明らかとなった。また、色模様変化個体の選抜継代飼育実験を26世代行った結果を詳細に分析した結果、継代飼育された系統では色模様変化型の固定および低温耐性の獲得が同時に生じていることが明らかとなった。さらに、北限調査で採集された個体からF1、F2、F3を得たのち、各世代における色方様変化型の割合を比較した結果、北限固体群に見られる変化した色模様形質が遺伝するものであることが確認された。以上の成果により、ヤマトシジミの北限個体群における色模様変化型の多数出現について、その発生過程の基盤的メカニズムがほぼ明らかとなり、北限進出による低温環境が低温耐性と変化した色模様との両方の形質を兼ね備えた個体を生み出し、その形質が交配時に中立的に個体群内に浸透したのではないかという結論が得られた。 また、毎年度の新たな発見として、これまでの北限であさった日本海側における個体数の大幅な減少が観察されるとともに太平洋側において生息域の北上が観察され、北限位置の変動の可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度では予定されていた実験についてほぼ予定通りに実施されたとともに、来年度に予定されていた実験に関する結果を得ることができた。そのため、来年度ではさらに実験を進めることや論文化が可能であることから順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究において現段階で欠落していると考えられる実験は北限個体における行動実験である。北限個体を用いた行動実験についそては今年度においそも試みたが、北限個体群の著しい衰退が観察されたため十分な個体数を得るととができず実験を行う'ことができなかつた。そのため、来年度においでは再度北限個体群の調査を行うとともに北限個体を用いた行動実験を賦みる予定である。また来年度では新たに観察された太平洋側の北限個体群ついても低温耐性の有無や行動実験を試みることを予定している。さらに北限個体群の遺伝的特異性を調べるためにAFLP法(Amplified fragment length polymorphism analysis)を用いたDNA配列比較を行う予定である。
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Research Products
(2 results)