2014 Fiscal Year Annual Research Report
日本列島の古代国家形成過程における銅鏡生産の変遷と社会動態
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13J05752
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中井 歩 九州大学, 比較社会文化学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 古代国家形成過程 / 銅鏡 / 古墳時代 / 生産と流通 / 小型鏡 / 重圏文鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,日本列島における古代国家形成過程を,物質文化の生産・流通から明らかにすることである。平成26年度は以下の項目を中心に研究を行った。 1.小型鏡の生産と流通。古墳時代において近畿中央政権は大小の鏡を配り分けることで,授与される側の序列化を図ったと考えられている。一方で,一部の小型鏡は各地で独立した生産を想定する見解もあり,問題の整理・解決が必要である。申請者は小型鏡のなかでも「重圏文鏡」という鏡群の分析を行い,その生産と流通が同時期のほかの鏡群とは異なる可能性を指摘した。重圏文鏡は古墳時代以前の弥生時代における銅鏡生産とも関連が指摘されており,弥生時代終末から古墳時代前期における,銅鏡の生産と流通の変遷に言及することが出来た。また,このような成果から,両鏡群における原材料や鋳造技術の相違が想定され,今後の化学分析を展開するうえで重要な成果であると考える。 2.資料の実見。関東・関西・四国・九州など,全国各地から出土した銅鏡の調査を,熟覧・写真撮影・断面実測を中心に行った。実見によって製作技術や銅質の観察をすることができ,その成果の一部は上記の小型鏡の生産と流通を明らかにする結果となった。 3.関連遺物や遺跡の調査・分析。福岡県山の神古墳出土鉄鏃の整理および考察を行った。鉄鏃は,銅鏡と同様に近畿中央政権によって生産・流通が管理されていたと考えられている。一方で,一部には強く地域性が反映されており,当該期の物質文化の動向を考えるうえで重要である。さらに,金属製品という点でも銅鏡との共通性は高く,鉄鏃の報告を通して,本研究を進めるうえでの知見を広げることが出来た。また,福岡県桂川町所在の金比羅山古墳・天神山古墳の発掘・測量調査に参加した。両古墳は大型前方後円墳であり,古代国家形成過程における地域間関係を考えるうえで重要な古墳である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の課題であった小型鏡の生産と流通について,一定の成果を発表することができた。この課題は,古墳時代開始期の日本列島における銅鏡の生産と流通を考えるうえで重要であり,当時の社会像とも関連する問題である。さらに,当該期の銅鏡の原材料分析を展開するために,考古学的事象から仮説を構築することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り,銅鏡のデザイン・製作技術・流通と消費の分析および原材料の化学分析を軸に,古代国家形成過程の各時期(古墳時代前期・古墳時代中期・古墳時代後期)ごとに分析を進めていく。また,平成25年度から課題としている小型鏡の生産と流通について,さらに通時的な検討を進める予定である。
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Research Products
(2 results)