2013 Fiscal Year Annual Research Report
レーザー走査型テラヘルツ波放射イメージングシステムの開発
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13J05765
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
芹田 和則 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | テラヘルツ / 電気光学結晶 / イメージング / 非線形光学結晶 |
Research Abstract |
平成25は、システム開発とシステム応用に関する研究を並行して実施した。 システム開発に関して、テラヘルツ(THz)エミッターに電気光学結晶のGaAs (110)を利用し、かつ集光レンズ系の改良を行った。その結果, THzイメージングの空間分解能として最大20μmを達成することができ、これまでの有機非線形光学結晶をエミッターとした場合(分解能27μm)と比較して若干の分解能向上を達成することができた。また、検出器にTHzイメージャー(NEC : IRV-T0831)を用いることで検出領域をこれまでの約5倍に拡張できることが分かった。 システム応用に関して、本システムの近接場THz波発生機構を利用することにより、毛髪1本、微量液体, ナノ粒子材料の評価に本システムが有効利用できることが分かった。毛髪1本の評価では、毛髪の表面状態(キューティクルの有無)が毛髪内部の保湿具合に密接に関連している可能性をTHz領域で初めて観測することができた。微量液体の評価では、GaAs (110)表面上に微量液体貯蓄用の微小な穴を光リソグラフィーによって作製した「THzチップ」の開発を行った。これをシステムに導入することで、各種溶液(油、砂糖水など)のTHz吸収スペクトルの差異をごく微量(~200nL)で検出することに成功した。また、溶液濃度の違いでTHz波の吸収率が敏感に変化することから、検量線による数ナノモル程度の溶質量変化の評価が行えることが分かった。このことから、本システムとTHzチップを利用することで、微量溶液中の溶質情報を高感度に検出できる可能性がある。ナノ粒子材料の評価では、印国・S. N. Bose National Centre for Basic SciencesのK. Mandal博士のグループと共同で、ユニークな磁気特性を示す材料として知られる磁性ナノ中空粒子(Fe_3O_4)の計測を行った。その結果、THz吸収スペクトルにおいて、数十~数百nmの粒子径サイズの違いを吸収率の差異として観測することができ、ナノ粒子材料の内部構造評価にも本システムが有効利用できる可能性を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有機非線形光学結晶と比較してより入手が容易で安価なGaAs (110)をTHzエミッターに利用しても、高分解能なTHzイメージングや各種サンプルの分光評価が行えることを示すことができた点で、産業利用に適したシステム開発が順調に行えていると考えている。また、本システムを利用して固体・液体など様々なサンプルの評価が可能なことを示すことができた点から、今後のシステム応用利用可能性についても予想以上の進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
システム開発に関しては、高速イメージング測定に向けて、レゾナンス型ガルバノメーターを導入し、システムノイズ評価ならびにイメージング性能評価について検討を行っていく予定である。 システム応用に関して、今後も固体、液体など様々なサンプルに対するシステム応用利用可能性を探っていく。特に微量溶液計測の高感度化に努め、DNAや血液などの生体試料に対しても評価を行っていく予定である。また、THzメタマテリアルの近接場評価に関して、豪国・アデレード大学で開発を行った非線形THz波解析モデルである「分布光源モデル」を利用してシミュレーションを行い、実測値との比較や詳細な電磁界解析を行っていく予定である。
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Research Products
(4 results)