2013 Fiscal Year Annual Research Report
異なる光環境下に生育するカタバミが及ぼすヤマトシジミの選好性メカニズム解明
Project/Area Number |
13J05767
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山口 芽衣 筑波大学, 大学院生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | ヤマトシジミ / カタバミ / シュウ酸 / アピゲニン配糖体 / 光環境 / 産卵刺激選好性 / 摂食刺激選好性 / 成長因子 |
Research Abstract |
異なる光環境下におけるヤマトシジミの産卵選好性の可視化については行った実験では、野外の照度の異なる8区画においてヤマトシジミメス成虫の産卵数を計測し、その選好性を調査した。その結果、ヤマトシジミメス成虫は相対照度の高い区画(相対照度80%)から比較的高い区画(同50%)において産卵する傾向が明らかになった。また、カタバミ葉における化学成分の分析では、有機酸量および防御物質、無機栄養元素などを分析した。これらの調査項目は一般的に昆虫の産卵、摂食、成長に影響されるとされており、その結果、照度の高い区画と低い区画の間では特に、有機酸と防御物質について量的違いが認められた。有機酸はGC-MS, GC, HPLCを用いて分析を行ったところ、カタバミの主要有機酸としてシュウ酸を同定した。また、フェノール性化合物について、HPLC、TLC、質量分析などを用いて分析を行ったところ、主要フェノール性化合物はアピゲニン配糖体であることが分かった。明るい環境と暗い環境における両化合物の含有量は、成虫の産卵および幼虫の摂食の選好性と類似する傾向を示し、これらの化合物が成虫、幼虫の選好性に関わる因子である可能性を示唆した。また、これらの野外の結果をよりコントロールされた条件下で再現するために、光環境を操作し、明条件・暗条件にてカタバミを栽培し、それぞれの葉について化学分析、産卵選択試験を行った。このカタバミ葉を用いた産卵選択試験では野外と同様、暗条件で栽培した葉に比べて明条件で栽培した葉を選ぶ傾向があることが観察された。さらに化学分析の結果、カタバミを明条件から暗条件に移して1ヶ月経過すると、シュウ酸量が急激に減少するのに対して、明条件下ではシュウ酸量は変化しなかった。野外衆境と同様に、人為的明条件栽培したカタバミでよりシュウ酸が安定的に生産されたことは、カタバミのシュウ酸生産における大きな部分を光環境が担うことが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
進行状況は期待通り良好である。当初予想していた以上に産卵および摂食の選好性の傾向がカタバミ葉の化学成分の変動と類似していることが観察できたことから、本研究の目的である「異なる生育光環境下におけるヤマトシジミチョウ寄主選択の選好性メカニズムの解明」を成し遂げるために、計画の追加、また計画の順序を入れ替えた。
|
Strategy for Future Research Activity |
成虫ヤマトシジミチョウの寄主選択の選好性の解明ではヤマトシジミろ紙生物試験法を確立し、抽出物、画分の産卵刺激活性の追跡を行った。現在、その活性画分が高極性画分に存在することを確認しており、今年度は引き続き、ろ紙生物試験を用いてその活性成分の単離同定を行いたい。 人工飼料を用いた幼虫における成長率、摂食効率の解明では、幼虫が成虫になるまで生育できる人工飼料の開発を行った。26年度は作成した人工飼料に抽出物から得られた画分を混合し、摂食刺激活性成分を探索する。26年度は25年度進行した計画のさらなる進展と、25年度計画していた、新たに得られた結果により入れ替えた計画を準じて行っていきたい。
|
Research Products
(1 results)