2013 Fiscal Year Annual Research Report
膜局在ユビキチンプロテアソーム系による植物の細胞間協調的な器官形成
Project/Area Number |
13J05776
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
水谷 未耶 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | E3ユビキチンリガーゼ / 植物細胞壁 / 器官形成 / 発生 / 細胞膜 / ユビキチンプロテアソーム |
Research Abstract |
申請者は、植物の細胞間協調的な器官形成における膜局在ユビキチンプロテアソーム系の関与をテーマとして研究に取り組んだ。材料としてゼニゴケ形態形成異常株nop1を用い、表現型と原因遺伝子の機能を解析することで、細胞間隙を持つ器官発生の分子機構解明を目指している。当該年度は①表現型の観察においては、組織の樹脂切片および蛍光標識手法を利用した光学切片を観察した結果、nop1では表皮細胞層と下層表皮細胞層間に見られる気室のもとになる間隙が全く形成されていないことを明らかにした。②NOP1の機能解析においてはNOPIのE3ユビキチンリガーゼ活性測定を行った。U-Boxドメインによく似たE3ユビキチンリガーゼであるRINGフィンガーモチーフの知見を参考に、E2タンパク質と直接結合するアミノ酸残基を予想した。そのアミノ酸について1アミノ酸置換して大腸菌内で発現精製した変異NOP1組換えタンパク質及び野生型NOPIの組換えタンパク質について自己ユビキチン化活性を測定することでE3ユビキチンリガーゼの活性化能を測定した。その結果、野生型NOP1ではE3ユビキチンリガーゼ活性があり、変異NOP1では活性の低下及び消失が確認された。このことから、NOPIはE3ユビキチンリガーゼとして働くこと、またE3ユビキチンリガーゼとして働くためには機能的なU-Boxドメインが必要であることが、in vitroで示された。さらに、原因遺伝子NOP1に蛍光タンパク質を結合し解析を行った。解析の結果NOP1は細胞膜に局在し、気室が形成されつつある成長点を含む広い範囲で発現していることを明らかにした。以上の内容とこれまでの成果を論文としてまとめThe Plant Cell vol. 25 (Ishizaki and Mizutani et al., 2013)に公表した。また、国内外の学会で発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、交付申請書に記載した1年目の研究計画を達成した。野生型とnop1変異体の組織の樹脂切片および蛍光標識手法を利用した光学切片を観察し、発生の様子を比較した。変異体の原因遺伝子NOP1はU-Boxドメイン含みE3ユビキチンリガーゼ活性をもつタンパク質コードすることをin vitroで示した。NOP1遺伝子のプロモーターを利用し発現部位に関する予備的な知見を得た。これらに申請時に得られていた成果も加えて、論文として取りまとめた。また、膜付近に局在するNOP1によるタンパク質分解が関与する制御機構のモデルを構築した。その検証に向けて、生化学的手法や逆遺伝学的手法を利用した解析を立案した。解析に必要な形質転換系統を作成し、次年度の解析に備えた。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度に得られた成果をもとに、膜付近に局在するNOP1によるタンパク質分解が関与する制御機構のモデルを構築した。その検証に向けて、生化学的手法や逆遺伝学的手法を利用した解析を立案した。解析に必要な形質転換系統を作成し、次年度の解析に備えた。次年度はnop1表層細胞の働きを細胞マーカーにより解析し、野生株との機能の違いを調べる。平成25年度に作成した植物体をもちいてE3ユビキチンリガーゼの標的となるタンパク質同定のためにMS解析を行う。サプレッサー変異体をT-DNAタギング法及びENS処理により取得し、原因遺伝子の同定を行い、MS解析の結果と合わせてNOP1の標的タンパク質及び関連因子を単離する。平成25年度に得られたほかの気室形成異常株について、表現型の観察を行う。また、次世代シーケンサーなどの手法を用いて原因遺伝子の同定を行うことで、気室形成における関連因子の同定を目指す。
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