2014 Fiscal Year Annual Research Report
膜局在ユビキチンプロテアソーム系による植物の細胞間協調的な器官形成
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13J05776
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
水谷 未耶 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | E3ユビキチンリガーゼ / 植物細胞壁 / 器官発生 / 細胞間隙 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の細胞間隙は呼吸や光合成におけるガス交換に重要な組織構造であるが、その発生分子機構はほとんど分かっていない。ゼニゴケは、葉状体の背面に細胞間隙を持つ器官である気室を形成する。我々は、植物における細胞間隙形成のモデル系として、ゼニゴケの気室形成過程を解析している。これまでの研究でNOP1はE3ユビキチンリガーゼとして機能することが示唆された。そこでNOP1の標的因子を含む関連因子の単離同定を目指した。平成26年度はNOP1によるタンパク質分解の標的となる因子や関連因子の単離同定を目指した。NOP1にエピトープタグ (Citrine) を付加し,免疫沈降およびMS解析を行った。また、効果的にユビキチン化標的を捕捉するために、E3ユビキチンリガーゼ活性に必要なU-boxドメインを持たない変異型NOP1 (不活性型) -Citine(⊿UboxNOP1:Citrine)を発現する形質転換体を用いることにした。精製したNOP1-標的タンパク質複合体についてLC-MS/MS解析を行った。その結果いくつかの標的候補因子が単離されたほか、細胞壁再構築に関わる因子が高頻度で検出された。これまでの研究からNOP1は細胞壁を再構築し、細胞間接着の剥離を制御していると考えられる。また、NOP1が制御する間隙形成段階を明らかにするために、微小管可視化株を作出し、野生型とnop1変異体における初期間隙形成時の微小管の動態を観察した。この結果、初期細胞間隙形成時に細胞間接着が剥離する箇所に微小管が集合している様子が観察された。今後、標的候補因子や細胞壁再構築因子の詳細な解析を行うことで、細胞間隙形成の分子機構が明らかになると考えられる。 上記の内容とこれまでの研究を合わせ、国内外の学会で発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は免疫沈降法によりNOP1の標的タンパク質を同定することを目的に、前年度までに準備したエピトープタグ(Citrine)との融合NOP1タンパク質を発現する形質転換系統を用いて、NOP1タンパク質が形成する複合体の精製条件検討を行った。さまざまな複合体抽出方法を系統的に検討した結果、比較的特異的にタンパク質複合体を得る条件を見出した。この条件で精製したタンパク質複合体の質量分析(LC/MS/MS)解析を行い、共免疫沈降するタンパク質を同定した。得られた一次候補タンパク質のなかから、タンパク質の局在や予想される生化学的実体などの要素も考慮し二次候補を絞り込んだ。これらの候補因子について、遺伝子破壊株を得るための準備を進めた。また、ゼニゴケの細胞間隙発生初期の可視化に成功し、微小管可視化株の作出により初期間隙付近での微小管動態を観察できるようになった。この技術を用いて野生型株とnop1変異体との間隙形成部での微小管動態を比較できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は得られた候補因子について、CRISPR/Cas9システムを用いて遺伝子破壊株を取得し、気室を中心に表現型を観察する。また、共免疫沈降や酵母2ハイブリッド法などを用いてNOP1との相互作用を検証する予定である。 さらに、ゼニゴケの酵母2ハイブリッド法のライブラリーを作成中であり、このライブラリーを用いて、質量分析の再現性を確認するとともに、質量分析では得られなかった関連因子候補を取得する予定である。 別に取得された気室形成異常株について次世代シーケンサーを用いた解析を行い、原因遺伝子を特定することで、新たな気室発生制御因子の単離をめざす。
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Research Products
(2 results)