2013 Fiscal Year Annual Research Report
松果体関連器官における色識別機構の進化と多様性の解析
Project/Area Number |
13J05782
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
和田 清二 奈良女子大学, 理学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 松果体 / 光受容 |
Research Abstract |
これまで研究代表者を含む研究グループは、下等脊椎動物の松果体関連器官でなされる色(波長)の識別で機能する、UV光受容タンパク質と緑色光受容タンパク質が共通であることを示唆してきた。本年度の研究では、これら2つの光受容タンパク質が実際に生体内で波長識別にどのようにかかわるのかを知るために、円口類と魚類の松果体について組織学的、電気生理学的な解析を試みた。 1. 組織学的解析 : カワヤツメにおいて遺伝子を単離した緑色光受容タンパク質に対する抗体を作製し、それを用いて組織学的解析を行った。円口類カワヤツメの松果体と副松果体では、興味深いことに、2種類の光受容タンパク質は異なる細胞にそれぞれ存在していた。また、松果体にはUV光受容タンパク質が多く、逆に副松果体には緑色光受容タンパク質が多く存在していた。一方、硬骨魚類ゼブラフィッシュでは、UV光受容タンパク質と緑色光受容タンパク質が同一の細胞に発現しており、この2種類の光受容タンパク質を共発現する光受容細胞は、ゼブラフィッシュ松果体の先端から両翼の松果体表面部分に多く存在することを見出した。 2. 電気生理学的解析 : カワヤツメの松果体に存在する波長識別に関わる緑色光受容タンパク質発現細胞が、光に対してどのような応答をするのかを明らかにするために、細胞内記録法により、光受容細胞および神経節細胞の光応答を解析した。その結果、細胞内記録により得られた応答のほとんどは、波長識別には関与しないと考えられる、松果体に存在するロドプシン発現細胞由来の応答であることが分かった。したがって、今後、感色性応答に関わる緑色光受容タンパク質を発現する細胞が多く発現する副松果体を用いて、細胞内記録による解析を行う必要があることが分かった。一方、ゼブラフィッシュ松果体のUV光受容タンパク質と緑色光受容タンパク質を共発現する細胞に関しては、UV光受容タンパク質のプロモーター下でGFPを発現する遺伝子導入個体を用い、顕微鏡下で微小電極の細胞内刺入に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カワヤツメ松果体に存在する波長識別に関わる緑色光受容タンパク質発現細胞からの光応答を記録することは困難であったが、カワヤツメ緑色光受容タンパク質を特異的に認識する抗体を作製し、緑色光受容タンパク質の詳細な局在を明らかにし、今後の解析に重要な知見を得ることができた。また遺伝子導入ゼブラフィッシュを用いることで、松果体の中でも細胞数の少ない緑色光受容タンパク質発現細胞に、微小電極を刺入することに成功している。これらのことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
カワヤツメを用いた緑色光受容タンパク質発現細胞の光応答の解析は、今後、副松果体にターゲットすることで、緑色光受容タンパク質発現細胞由来の光応答を記録できると考えている。また、電気生理学的な解析に応用するために、近年注目されている遺伝子ノックアウト技術(CRISPR/Cas9)により、UV光受容タンパク質と緑色光受容タンパク質のそれぞれをノックアウトしたゼブラフィッシュを作製する。
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Research Products
(5 results)