2014 Fiscal Year Annual Research Report
松果体関連器官における色識別機構の進化と多様性の解析
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13J05782
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
和田 清二 奈良女子大学, 理学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 松果体 / 光受容 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで研究代表者を含む研究グループは、下等脊椎動物の松果体関連器官でなされる色(波長)の識別で機能する、UV光受容タンパク質と可視光受容タンパク質が共通であることを示唆してきた。本年度の研究では、これら2つの光受容タンパク質が実際に生体内で波長識別にどのようにかかわるのかを知るために、主に円口類と魚類の松果体について組織学的、電気生理学的な解析を試みた。 【分光学的解析】 これまでに、予備実験的に培養細胞を用いた発現系によって、カワヤツメ松果体に存在する可視光受容タンパク質の発現に成功していたが、発現量が少ないことから、詳細な吸収極大の決定には至っていなかった。また、カワヤツメ松果体の大部分を占める発色団であるA2レチナールを用いた解析も未実施であったので、26年度は実験系の最適化を中心に、A2レチナールを用いた可視光受容タンパク質の吸収スペクトルを解析した。その結果、カワヤツメ可視光受容タンパク質はA2レチナールで再構成したとき、およそ570 nmに吸収極大が存在することを明らかにした。 【電気生理学的解析】 平成25年度から引き続き、カワヤツメの松果体を用いた細胞内記録による解析を行い、光受容細胞および神経節細胞の光応答を調べた。その結果、細胞内記録により可視光受容タンパク質発現細胞から光応答を記録することに成功した。可視光受容タンパク質発現細胞は可視光に対し脱分極性の応答を示した。一方、ゼブラフィッシュ松果体のUV受容タンパク質・可視光受容タンパク質共発現細胞に関する電気生理学的解析は、平成27年度中に、遺伝子ノックアウト個体を用いて行う予定である。それぞれの遺伝子ノックアウト個体は作製が完了しており、現在、ノックアウト個体と標的細胞にGFPを発現させた遺伝子導入個体とを交配することで、GFPが遺伝子導入されたノックアウト個体を作製し、それらを電気生理学的に解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カワヤツメ松果体の波長識別に関わる可視光受容タンパク質の吸収スペクトルを測定し、また、松果体の可視光受容タンパク質発現細胞からの光応答を記録することは困難を極めていたが、組織学的なアプローチから手掛かりを得て、26年度中に光応答を記録することができた。また、UV受容タンパク質、可視光受容タンパク質のノックアウトゼブラフィッシュの作製が完了した。これらのことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
カワヤツメの松果体を用い、より詳細な組織学的解析から、波長識別のメカニズムについて考察したい。また、遺伝子ノックアウトゼブラフィッシュを作製できたので、今後はゼブラフィッシュを用いて、波長識別の生理的役割を解明することにも精力的に取り組みたい。
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Research Products
(5 results)