2014 Fiscal Year Annual Research Report
アノールトカゲにおける温度適応機構の遺伝的基盤の解明
Project/Area Number |
13J05832
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
赤司 寛志 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 温度適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
外温性動物であるトカゲ類は、自ら至適体温を恒常的に維持させる能力が乏しいものの、日光浴など行動的に体温を調節することで、ヘテロな温度環境下において種特異的な体温を維持することができる。このように、トカゲ類において、温度環境に適応するには、外気温を感知するための温度感知形質、日光浴や姿勢変化などによって体温を行動的に調節する温度調節形質、そして獲得した体温下での生理的応答を行う温度依存形質の三つが考えられる。異なる選好体温を示すアノールトカゲ三種(Anolis allogus, A. homolechis, A. sagrei)を用いて、これら三形質を包括的に研究することで、アノールトカゲにおける温度適応機構を理解できると考えている。 生物の温度刺激受容は、温度感受性TRPイオンチャネル受容体(TRP)という膜貫通タンパク質を介して行われる。先行研究から、TRPの活性化温度は、その生物の生態学的に重要な温度と一致する例が報告されている。本研究の対象種であるアノールトカゲ三種は、日光浴頻度を変えることで体温を調節し、野外において異なる選好体温を示すため、温度感受能が種間で分化している可能性がある。そこで本年度は、アノールトカゲ三種の温度感受能の分化を検証するため、高温感受性TRPであるTRPA1の機能解析、即ち活性化温度の種間比較を行なった。 その結果、各種のTRPA1活性化温度は約35度付近となり、統計的に活性化温度には差がないということを示した。三種に対する近縁種(A. carolinensis)のTRPA1活性化温度がすでに先行研究において報告されており、実験のコントロールとして本研究でも近縁種のTRPA1活性化温度を計測した。その結果、近縁種の活性化温度の平均値は先行研究と一致した結果となり、実験は問題なく進めることができていると考えられ、アノールトカゲにおいて近縁種間でTRPA1活性化温度は分化していないことを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、異なる温度環境に生息するアノールトカゲ三種(Anolis allogus, A. homolechis, A. sagrei)の、温度感受性TRPイオンチャンル受容体タンパク質の機能解析を行なった。これは、当初の計画通りの進捗であり、研究遂行は順調である。さらに、次年度に予定していた、アノールトカゲを用いた行動実験にもすでに着手しており、次年度も予定通りの進捗が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在までに実験、解析が終了している研究結果の論文執筆、投稿を行なう。さらに、次年度の研究計画にある通り、アノールトカゲにおける温度依存的な行動の種間比較を行なう。体温調節に重要な、高温刺激に対する忌避行動や、ある温度環境下での "行動力"を比較する予定である。忌避行動と"行動力"を比較するうえでの予備実験はすでに終了しており、現在までに確立した手法で実験をすすめることができると考えられる。
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Research Products
(3 results)
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[Presentation] 温度感受性から迫る温度微環境の生息地分割のメカニズム2014
Author(s)
赤司寛志, Antonio Cadiz Diaz, Valentin Dacheux, Lazaro M. Echenique-Diaz, 牧野能士, 齋藤 茂, 富永真琴, 河田雅圭.
Organizer
第16回日本進化学会
Place of Presentation
大阪
Year and Date
2014-08-21 – 2014-08-24