2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J05843
|
Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
薄井 美帆 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | マラリア / 抗酸化系 / チオレドキシンペルオキシダーゼ / 肝臓型 / 人畜共通感染症 |
Research Abstract |
マラリア原虫にとって細胞内酸化還元(レドックス)バランスの制御は、宿主内適応、発育および増殖の成否を左右する重要なメカニズムであり、その解明はマラリアの新しい制御法開発の起点になると考えられるが、その詳細は明らかではない。 今年度は、ローデントマラリア原虫Plasmodium berghei (ANKA株)野生型肝臓型において、各種抗酸化タンパク質(TPx-1、1-Cys Prx及びTPx-2)の発現解析をおこなった。 特異抗体による間接蛍光抗体法(IFA)の結果、TPx-1と1-Cys Prxは細胞質に、TPx-2はミトコンドリアに局在した。定量PCR (RT-qPCR)の結果、TPx-1mRNAは構成的な発現を示した。1-Cys Prx mRNAの発現はシゾント期から亢進しサイトメア期でピークとなった。一方TPx-2のmRNA発現はトロホゾイト期から亢進しシゾント期でピークとなった。以上の成績から、マラリア原虫肝臓型において、これらの抗酸化タンパク質はそれぞれ異なった細胞分画に異なったプロファイルで発現し、原虫を酸化ストレスから保護していることが示唆された。 また、TPx-1欠損原虫は肝細胞のスポロゾイト感染率は野生株と同等であるが、赤血球型出現までの潜伏期間が遅延し、肝臓型での発育障害が示唆されている。そこでTPx-1欠損原虫肝臓型の酸化ストレスに対する感受性をin vitro培養系を用いた親電子試薬負荷試験で調べた。感染蚊から調整したスポロゾイトを培養肝細胞に接種後20時間目にパラコート(0_2 ドナー)50uMを添加し、40時間目に原虫特異抗体によるIFAで原虫数をカウントした。その結果、TPx-1欠損原虫の数が野生株に比較して有意に少なかった。このことからTPx-1欠損原虫は野生株と比較して酸化ストレスに対する感受性が高いことが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記述した研究内容を研究計画通りのタイムスケジュールで遂行することができた。 また、一連の成果は専門分野の国際雑誌1報に公表済みで、また国内外の関連学会においても4回の研究発表がおこなわれていることを申し添えたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
申請書に記述した内容通りに、本年度は近年開発されたH2O2特異的検出用蛍光タンパク質プローブ(HyPer, Evrogen社)のコード領域をゲノムに組み込んだトランスジェニックP. berghei : 「酸化ストレス可視化原虫」を作製する。作出された酸化ストレス可視化原虫を用いて、マラリア原虫の運動・侵入といった、原虫が寄生生活を成り立たせる上で不可欠なイベントを中心に、原虫内酸化ストレスの強度を、共焦点顕微鏡を用いたライブイメージングで観察することにより、原虫の抗酸化システムがどのステージ、どのタイミングで最大限に活用されているかを明らかにすることを目指す。
|
Research Products
(7 results)