2013 Fiscal Year Annual Research Report
生分解性キレート剤を用いた土壌中放射性セシウムの化学的除染法の開発
Project/Area Number |
13J05863
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
澤井 光 金沢大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 放射性セシウム / 生分解性キレート剤 / 放射性汚染土壌 / 化学的除染法 / 土壌洗浄 / 化学的分画法 |
Research Abstract |
1. 土壌中セシウムの動態解析 土壌に吸着したセシウムを除去する場合, 土壌中のセシウムの化学的動態に関する知見は不可欠である。本研究では, 赤色土, 森林土, 黒ボク土等の自然土壌を採取し, セシウム133水溶液に浸漬・水洗浄・乾燥することで標準汚染土壌を作成した。これらの自然土壌に対するセシウムの吸着は定量的であり, セシウムは土壌の種類を問わず強力に吸着することが確認された。また土壌の化学組成や土壌中でのセシウム存在形態から放射性セシウムの土壌中での化学的挙動を考察した。逐次抽出による化学形態解析に基づく土壌中でのセシウム存在形態は, 土壌の粒径, 有機物や鉄等の金属含有量に大きく依存することを明らかにした。 土壌中セシウムの化学形態解析を6ヶ月に渡り実施したところ, 土壌中のセシウムは, 数ヶ月スケールの時間経過とともにより強固な化学形態に移行することを見出した。特に弱い吸着態である交換態セシウムは, 強固な残渣態セシウムへと顕著な形態移行を呈したことから, 既存の水洗浄等の除染技術は時間経過とともに除染効率が低下することが推測される。 2. 土壌中セシウムの化学的洗浄剤による除去 キレート剤としてエチレンジアミン四酢酸(EDTA)塩を含む中性の化学的除染剤を, モデルセシウム含有土壌に適用した。EDTAによる洗浄は, 水洗浄に比べて有意に高いセシウム除去率を示し, 最大で63%のセシウム除去率を達成した。キレート洗浄では, 水洗浄で除去が困難であった有機物態に分画されるセシウムが効果的に除去されたことから, キレート剤による化学的洗浄は有機物態セシウムに富む森林土, 黒ボク土等のセシウム除染に対して有用であることが見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
キレート剤であるエチレンジアミン四酢酸塩を含む化学的洗浄剤を土壌に適用し, 申請時の年次目標を充足するセシウム除染率60%以上を達成できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
大枠は年次計画に則り研究を遂行する。放射性セシウムの除染に最適な洗浄条件の選定を目指し, 生分解性キレート剤, アンモニウム塩などを含む化学的洗浄剤の開発を行う。また加熱洗浄, メカノケミカル洗浄の併用により, 強固な吸着態に分画されるセシウムの除染率向上を試みる。洗浄後の土壌においては, キレート剤の濃度変化(残存性)の追跡, 微生物等の生物相変化, モデル作物の生長量比較などを通して, 再生土壌への残存キレート剤の影響を評価する。
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Research Products
(12 results)