Research Abstract |
今年度は, 乳児期の感覚統合と言語獲得の問題に関して, 乳児と関わる養育者の情報処理過程を調べる実験を実施し, 論文化につとめた. 【問題】養育者は, 子どもと関わる時, 様々なモダリティを用いる, 中でも, 触覚(運動)と聴覚(発話)を使った母子間の相互作用は, 乳幼児期の情動や言語の発達に重要である. 養育者は, 子の年齢や文脈に応じて関わり方を調整することから, こうした養育行動は, 相互作用経験によって獲得されるスキルであると考えられる, しかしながら, 養育経験が養育者の情報処理過程にどのように影響するのかについて十分に検討されていない. 今年度は, 事象関連電位(Event-Related Potentials ; ERP)を用い, 触覚を介したマルチモーダルな母子間相互作用経験が, 母親の情報処理過程に与える影響を検討た. 【方法】母親と養育経験の無い女性が調査に参加した. 触覚刺激の呈示後, 対乳児発話または対成人発話の韻律を付加した音声刺激を呈示した. 音声刺激は触覚刺激と一致または不一致であった. 音声刺激呈示時の脳波を分析し, 母親と非母親の脳波の違いを検証した, さらに, 日常生活における刺激語の使用頻度を質問紙調査により評価した. 【結果と考察】母親群のみ, 対乳児発話音声を付加した(一致一不一致)間のERPに違いが認められた. さらに, 日常生活で刺激語をよく使う母親ほど, このERPの効果が大きかった. 母親は, 日常生活における触覚語を使った相互作用経験によって, 対乳児発話に対する選択的注意が促され, 一致と不一致間の弁別処理が高められたと考えられる. この結果は, 母親の相互作用の対象となる乳児が, 外界との相互作用を通じて, いかに多感覚情報を統合的に処理し, 情動的な・言語的なカテゴリを効率的に学習していくかについて示唆を与える重要な知見である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究結果については, 国内, 国際学会において発表済みであり, 現在, 国際誌に投稿段階であるため, また, 乳児期の視聴覚間統合に関する研究についても, データ取得が進行中であるため。
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