2014 Fiscal Year Annual Research Report
乳児期における視-聴-触覚情報処理と言語獲得との関連についての実験心理学的検討
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13J05878
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 友香理 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 乳児 / 感覚統合 / 対乳児音声 / 身体 |
Outline of Annual Research Achievements |
【問題】養育者は乳児に対して語りかける時、対乳児発話と呼ばれる誇張された音韻特徴を持つ話し方をする。日本語圏では対乳児発話として擬音語や擬態語(オノマトペ)がしばしば用いられる。乳児は生後早期から他者の音声に対して注意を向ける。音声の韻律的特徴は、生後6ヶ月児の視覚的物体の学習の手がかりとして機能し(Shukla et al., 2011)、音素は生後12ヶ月以降の視覚的物体との対応付けの手がかりとなる(Werker et al., 1998)。一方、視覚的な物体運動に対する乳児の注意の向け方に関しては、音素と韻律がそれぞれどのように影響するのか、その発達的変化は明らかでない。本研究では、音声中の異なる音韻特徴(i.e.,ピッチと音素)を操作し、視覚刺激に対する乳児の注意パターンの発達的変化を視線計測により検討した。今年度は実験1の追加実験として実験2を実施した。実験2は音素操作として無意味語単語を使用した(音素変化条件)。乳児の語彙レベルを母親に対する質問紙により評価した。 【結果と考察】音素不明瞭および音素変化条件では、音素変化は16ヶ月児の注視時間減少をもたらした。音素の変化は、16ヶ月児が視覚的物体運動との対応関係を知覚するための手がかりとして機能することが示唆された。一方、ピッチ変化に対しては、乳児の月齢によらず注意の増加をもたらした。この結果は、対乳児音声で見られるピッチの調整が、乳児の注意を誘引し、維持する機能を持つとする見解(Cooper & Aslin, 1990)に一致する。また、質問紙との相関分析により、音素を手がかりに視覚的物体運動と音声を対応づける乳児は、オノマトペ理解語彙数や発語数が多いことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究結果については,国内学会および国際学会において発表済みであり,現在,国際誌に投稿段階であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究題目を踏まえ、乳児期の触覚を介したクロスモーダル知覚統合課題を実施する。その過程において他者からの関わりがどのような影響をあたえるのかを明らかにすることが重要である。具体的には、養育者からの身体を介した相互作用が乳児の身体感覚や情動調整にどのように寄与するのかを明らかにすることである。もう一つは本年の研究実績の延長として他者からの音声ラベリングが乳児の視覚的運動知覚に与える影響を明らかにすることである。他者との相互作用を通して乳児の身体感覚がいかに高められ、乳児の情動的側面・運動的側面の異種感覚間の統合が促進されるかどうかを検証する。
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Research Products
(6 results)