2013 Fiscal Year Annual Research Report
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13J05883
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
植木 紘史 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 免疫 / 炎症 / がん / HMGB1 |
Research Abstract |
生体からがんの排除の課程において免疫系の働きが重要であり、その活性化にはインターフェロンや炎症性サイトカインが重要であることが報告されています。そこで、私は、炎症性サイトカインとして報告されており、炎症性疾患やがんとの関係が示唆されているHigh mobility group box 1に注目し、炎症応答・発がんにおけるその役割について解析を現在おこなっています。方法として、Hmgb1遺伝子欠損マウスは致死性であるため、我々の研究室において新規に作成したHmgb1floxマウスを用いて、その生理的役割について検討しています。解析にあたって、炎症性の刺激によってHMGB1を放出することが知られているミエロイド系細胞においてHMGB1を欠損したマウスを主に用いて解析を行っています。まず、炎症性疾患モデルをこのマウスに適用し、HMGB1の生理的役割について、分子・個体レベルで解析しています。現在までのところ、LPS誘導性敗血症モデルにおいて、野生型マウスに比べて、HMGB1を欠損したマウスでは、顕著に感受性を示すことを明らとしています。この結果は、生理的なHMGB1が、これまでの報告と異なり炎症を抑制する機能を持つことを示しています。同時に、炎症におけるHMGB1の役割に着目し、がんとの関連についてがん転移モデルを含めた発がんモデルを用いて解析しています。現在までのところ、HMGB1を欠損したマウスでは、尾静脈から投与した悪性黒色腫細胞が、全身のリンパ節に転移することを明らとしています。この結果は、HMGB1が腫瘍を抑制する機能を持つことを示しています。本研究のこれら2つの新知見から、生理的なHMGB1は、生体にprotectiveに機能することが示唆されました。今後は、HMGB1の炎症および発がんにおける機能、および今回示唆された新規機能を分子・個体レベルで明らかにすることで、炎症性疾患及びがんの治療応用に有効な基盤を作りたいと考えています。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HMGB1を欠損したマウスでは、尾静脈から投与した悪性黒色腫細胞が、全身のリンパ節に転移することを個体レベルで明らとしています。今後のHMGB1のがん排除におけるメカニズムの解析の足場となるものと考えられます。
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Strategy for Future Research Activity |
各種細胞種(肝細胞、樹状細胞等)においてHMGB1を欠損したHmgb1 cKOマウスを作製し、がん転移モデルにおいて、転移率、転移箇所を検討する。また肺、肝臓、脾臓、リンパ節におけるがん細胞および炎症性細胞の浸潤について組織染色等により解析します。さらに、Hmgb1 cKOマウスから免疫細胞を調整し、がん細胞に対する細胞傷害活性やサイトカイン産生の検討を行います。細胞外に放出されたHMGB1は他の分子と会合し、その会合パターンによって機能が異なってくる可能性も考えられることから、細胞外HMGB1と会合する分子について、検索を行い、必要に応じて質量分析により会合分子を同定します。また、HMGB1タンパクの修飾が異なっている可能性も考えられるため、質量解析に加え、生化学的手法等も視野に入れ、解析を行います。また、発がんモデルにおけるcKOマウスのがん発症率、発がんまでの期間について検討を行うと同時に、病理組織についても検討を行います。
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Research Products
(2 results)