2014 Fiscal Year Annual Research Report
社会的意思決定を支援する「気候-水循環-植生-人間」結合系のモデリング
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13J05893
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澤田 洋平 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 陸面データ同化 / 生態水文モデル / マイクロ波リモートセンシング / 干ばつ解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、「衛星観測を援用して水循環と陸上の植生動態が相互作用するようなモデルを構築し、世界最高水準の気象 - 水文- 陸上生態系カップリングシステムを開発すること」を目的としている。平成26年度は(1)水文-陸上生態系結合モデルの精度を衛星観測の同化によって高めることのできるシステム(CLVDASと呼ぶ)を完成させた。加えて、(2)地上マイクロ波観測実験による植物水分量推定手法の開発を平成25年度から引き続き行った。最後に(3)植物が干ばつに対してどのように適応しているのかを詳細に理解するためのモデリングを行った。 (1)のCLVDASの開発は、本研究課題の中核である。水と植物成長の関係を精緻に扱うモデルの開発のみならず、モデルに対してマイクロ波衛星観測を同化することで、土壌水分と植物成長の推定精度を大幅に改善することに成功した。このシステムの利用により陸域の生態水文過程の解析・予報精度が大幅に向上することが見込まれる。 (2)ではマイクロ波と可視・近赤外域のリモートセンシングを組み合わせることで、かつて無い精度で陸上の植物水分量を推定することに成功した。また新しい手法を衛星のフットプリントスケールで検証するために、Monash Universityの支援のもと、オーストラリアで集中観測を7月と10月の2回に渡って行った。 (3)は申請書には無いテーマであるが、本研究課題は水文-陸上生態系結合モデルを利用して干ばつなどの社会問題解決を行うことを主眼としており、植物が極端な干ばつに対してどのように応答しているのかを把握することは防災等の観点から重要であると考え追加した。植物が極端な干ばつに対して水の利用戦略を変えることで干ばつに対する頑健性を得ていることは観測からある程度知られている。この過程をモデル化することで陸面モデルの精度を改善することを目指して作業を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は3年間の研究計画の2年目にあたる。申請書に記載した2年目の計画の中には一部未達のものもあるものの、研究計画全体の見直しを行い、申請書には明示していなかったが研究課題全体の目的に対して重要なテーマを計画に追加し取り組んだ。またこれまでの成果のほとんどが既に論文として出版されているか、出版にむけて査読に入っており、全体として非常に順調に研究が進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では構築した水文-陸上生態系結合モデルを大気モデルと結合させる予定であった。しかし、大気モデルでの結果を一方的に水文-陸上生態系結合モデルに入力してシミュレーションするだけでも、干ばつなどの社会問題の解決にかなり寄与できることがわかってきた。そのため大気モデルとの結合は行わず、既に構築したシステムの高度化・検証および社会問題解決に向けた応用に集中する。
具体的に取り組む課題は以下のとおりである。(1)地上観測実験に基づいて構築した陸上植物水分量推定手法を平成26年度に収集した現地観測を用いて衛星フットプリントスケールで検証する。(2)植物が極端な干ばつに対して水の利用戦略を変える過程のモデル化を完成させ、オーストラリアで1990年代後半から2009年にかけて起こったミレニアム干ばつに適用する。(3)水文-陸上生態系結合同化システム(CLVDAS)のアフリカ大陸での検証と干ばつ予報への応用可能性を探る。
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Research Products
(6 results)