2014 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内寄生菌の体内伝播を制御するトラフィッキングシステムの解析
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13J05928
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
橋野 正紀 山口大学, 連合獣医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 細菌感染性流産 / 細胞内寄生菌 / 胎盤免疫応答 / MAPK signaling pathway |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、細胞内寄生性の流産起因菌であるListeria monocytogenes (Lm)とマウス胎盤における免疫担当細胞である栄養膜巨細胞(Trophoblast Giant Cell: TGC)を用いて、流産起因菌の胎盤感染機序の解明をもとに「細胞内寄生菌の体内伝播を制御するトラフィッキングシステムの解析」に取組んでいる。 これまでの研究により、炎症性サイトカインであるInterferon-gammaによりTGC内でのトラフィキッングシステムへの関与が期待されるセマフォリン3Eの発現量の増加が確認された。さらに、TGCへのLm感染にはMitogen-activated protein kinase(MAPK)シグナル伝達経路の活性化が関与していることが示唆された。本研究計画では、Lmの胎盤感染においてTGCの細胞骨格の制御および膜融合が重要な鍵となると考えている。このため、既述の結果および今後の細胞骨格の制御・膜融合の解析において細胞内シグナル伝達が重要な役割を担っていると考えられた。しかしながら、TGCにおいてLm感染よる細胞内シグナル伝達の動態については未だに不明な状態にある。そこで2014年度は、TGCを用いてLm感染によるMAPKシグナル伝達の動態についての解析を行った。その結果、Lm感染によるMAPK family protein(p38, ERK)およびc-Junの脱リン酸化が確認された。さらに、これらの脱リン酸化による抗アポトーシス作用を有するheme oxygenase(HO)-1の発現量の減少が確認された。Lm感染による流産では、胎盤細胞のアポトーシスが関連することが報告されており、本研究結果からLm感染によるMAPK family proteinおよびc-Junの脱リン酸化がHO-1の発現量の低下を介してアポトーシスを誘導することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までの研究成果であるInterferon-gammaによるセマフォリン3Eの発現量増加およびListeria monocytogenes(Lm)感染へのMitogen-activated protein kinase(MAPK)シグナル伝達経路の関与から、本研究の進展において栄養膜巨細胞(Trophoblast Giant Cell: TGC)における細胞内シグナル伝達経路についての解析が必要であると考えられた。そのため2014年度は、MAPKシグナル伝達経路に着目しTGCへのLm感染との関連性の有無についての解析を行った。得られた結果は、これまで不明な状態にあったLmの胎盤感染による流産誘発機序の解明において、初めて関連性を有する細胞内シグナル伝達経路を示唆したものであり、感染性流産の予防・制御に対して一助となるものであると考えられた。さらに、現在2014年度に得られた結果を基に筆頭著者論文を投稿準備中である。 また、本研究計画において、菌の胎盤感染には宿主側の因子として膜融合および細胞骨格の制御が重要な役割を担うと考えている。これらの膜融合および細胞骨格の制御には多種の細胞内シグナル伝達が強く関与していることが知られており、これまでに着目してきたMAPKシグナル伝達経路も細胞骨格の制御に関与を有することが報告されている。このため、2014年度に得られた結果は来年度の研究において有用な基礎データであると共に、本研究における重要な成果となることが考えられた。また、来年度の研究においても着実な進展がなされることが期待できる。以上の理由から「おおむね順調に進展している」を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度は、栄養膜巨細胞に発現が期待される細胞骨格の制御因子に着目し、前年度までに得られた研究成果をもとに解析を進めていく予定である。具体的には、着目する細胞骨格の制御因子が菌の細胞移行への関与を有するか否かについて、これら因子のノックダウンおよび過剰発現処理を行った栄養膜巨細胞を用いて検討する。この際には、セルカルチャーインサートを用いたコカルチャー(二重培養)実験系を実施し、共焦点レーザー顕微鏡による解析を行う予定である。また、この解析過程での必要性に応じて電子顕微鏡を用いた形態学的手法による解析を行うことが考えられる。さらに、これらの細胞骨格の制御因子がInterferon-gamma(IFN-g)およびMitogen-activated protein kinase(MAPK)シグナル伝達経路により制御されているか否かについても検討を試みる予定である。この検討においては、前年度までの研究成果を基にIFN-gおよびセマフォリン3Eによる着目因子の発現量への影響の有無についてwestern blottingを用いた解析を行うと共に、MAPK family protein阻害剤を用いてこれら因子がMAPKシグナル伝達経路との関連性を有するか否かについてもwestern blottingによる検討を行う予定である。また、セマフォリンに対する感染マクロファージの反応性についての検討も継続して行う予定である。即述のように2015年度は、これまでに得られた成果を用いて、実際にマクロファージを介した菌の受け渡しが起こるかについてセマフォリン、細胞骨格の制御因子および細胞内シグナル伝達経路等に着目した多角的な解析による検討を実施する予定である。
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Research Products
(4 results)