2013 Fiscal Year Annual Research Report
単粒子法を応用した分子モーターキネシン・微小管複合体のクライオ電子顕微鏡構造解析
Project/Area Number |
13J05975
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森川 真夏 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | キネシン / GTP型微小管 / クライオ電子顕微鏡 / 単粒子解析 / キネシンのRigor構造 / 軸索輸送 |
Research Abstract |
神経細胞においてキネシン(KIF5C)は、GTP型微小管(軸索に多いタイプ)とGDP型微小管とを区別し、軸策への物質輸送を行っているという報告がある。この輸送の構造的なメカニズムを明らかにする目的で、クライオ電子顕微鏡を用いてキネシン-微小管複合体の解析を行い、1~4の成果を得た。 1. 精密な電子顕微鏡構造の取得 キネシンが結合したGTP型とGDP型微小管をクライオ電顕で撮影し、単粒子解析により8.1Åの高解像度の構造を得た。この電子顕微鏡構造と擬似分子モデルをそれぞれEMDBとPDBに登録した。この構造とこれまで報告されている構造との比較を行なったほか、複合体がとる新しい構造についても明らかにした(以下2~4)。 2. 軸索選択性の構造的裏づけ キネシン-GTP型/GDP型微小管複合体について、統計学的に有意な変化を計算したところ、キネシンのL11領域がGTP型微小管との結合に関与していることがわかった。そこで、L11変異体を作製し一分子解析を行い、L11内のKIF5特異的なアミノ酸配列がGTP型微小管の認織に必要であることを突き止めた。 3. キネシンが前進するメカニズム 本研究では、ADPを放出しATPが入るまでの中間状態のキネシン構造(Rigor構造)を初めて得ることができた。こうしてキネシンがATPを迎え入れるメカニズムが明らかになった。 4. 微小管に起こる構造変化 複合体構造と微小管単体構造とを比較した結果、キネシンが結合した際に起きる微小管表面の構造変化が、キネシンの進行方向にあるチューブリンの構造変化を引き起こしていることがわかった。これはCooperative Binding (Muto et al., 2005)の構造的な背景と考えられる。この構造変化は、キネシン―微小管複合体の安定性が、単体の微小管よりも高いことを示す実験によっても補強した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
クライオ電子顕微鏡画像の三次元再構成と二次元再投影を繰り返し行う工夫をしたことで再構成パラメータを精密化したため、高解像度の構造を得ることができた。この構造は主要な二次構造要素を可視化できていたため、構造の解析が順調に進み、当初、一年次から三年次で行う予定であった研究を達成することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた研究成果を論文にまとめ、投稿している。これまでは神経細胞内でのモータータンパク質の運動について研究してきたが、今後はその制御についても研究を進めていく方針である。
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