2013 Fiscal Year Annual Research Report
グラフェンを利用した生体膜モデル上での高精度分子計測手法の開発
Project/Area Number |
13J05980
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
岡本 吉晃 豊橋技術科学大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 脂質二重膜 / グラフェン酸化物 / 蛍光一分子観察 / 量子ドット |
Research Abstract |
本研究の目的は、グラフェンおよびグラフェン酸化物(GO)の有する特異的な蛍光クエンチ能を利用し、GOと脂質二重膜を組み合わせた新規分子計測手法を開発することである。H25年度は、先行研究にて私が構築した人工脂質膜/GO系を利用して、蛍光クエンチ効率の距離依存性とその分子機構を解明することを目指し、蛍光色素よりも高輝度な量子ドット(Qdot)を蛍光プローブとして支持平面脂質二重膜(SLB)表面を標識し、一粒子蛍光追跡(SPT)法によるGO上人工脂質膜の流動性評価を行った。 SLBとQdot間に共有結合を形成するために、例えばアミン末端脂質を混合したSmとカルボキシ基被覆Qdot標識など官能基の組み合わせを変えて試したところ、多くの場合でQdotの非特異的吸着が起きた。そこで、非特異的な吸着を抑制しつつSLB表面をQdotで標識するための条件検討を行った。 Qdotを両末端にマレイミド基とヒドラジド基を有するヘテロクロスリンカーで修飾した。リンカーのみで修飾した場合に、1つのQdotが複数の脂質と結合することが懸念されたため、リンカーとアミノエトキシエタノールを混ぜることでQdot表面の反応点の数を制御することを試みた。その結果、SLB表面を拡散するQdotを観察することができた。拡散係数(D)はばらつきが大きく、まだQdotが複数の脂質と結合していることが考えられるが、Qdot一粒子から平均二乗変位(MSD)解析を行うのに十分な長さの軌跡を得ることができた。GO上に形成したSLBにも同様にリンカー修飾したQdotを結合させて、数は少ないものの拡散するQdotを観察して拡散係数を定量的に評価することができた。得られた伽時空間依存性から、GO上のQdot標識脂質はランダム拡散しており、SiO_2上のSLBとよく似た性質を有することを示唆する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
GOは高効率の蛍光クエンチャーであるため蛍光観察を基盤とする流動性計測手法を行うことは困難であるが、Qdot修飾の条件検討を詳細に行うことによってGO上SLBについて定量評価することに成功した。本手法に強く興味を持った学外研究者との共同研究も始まるなど、当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
GO上脂質二重膜の流動性評価は可能になったがQdot標識の実験条件にはまだ改善の余地がありその最適化を行う。その後、疎水部のアルキル鎖長の異なる脂質を使用することでSLBの厚さをÅオーダーで制御してGO上に形成し、Qdot標識を行い、その蛍光強度からGOの蛍光クエンチ効率の距離依存性を明らかにする。必要に応じて励起光路等の一分子蛍光強度計測のための装置および解析ソフトウェアの改良を行う。また、Qdot-SLB間の化学修飾手法をGO-SLB間にも応用し、GO上にリンカー分子を介してSLBを形成する「繋ぎ留め型」SLBを作製することでGO-SLB間距離の制御を精密に行い、Qdotよりも汎用性の高い蛍光色素分子の蛍光強度計測ためのSLB/GO系を確立する。
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Research Products
(6 results)