2013 Fiscal Year Annual Research Report
高分解能X線スペクトルで明らかにする宇宙の化学進化と構造進化
Project/Area Number |
13J06005
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
小波 さおり 首都大学東京, 理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | X線天文学 / 銀河・銀河内 / 重元素 / 進化 / マイクロカロリメータ / ①当初の計画以上に進展している。 |
Research Abstract |
本研究の目的は、銀河に付随する高温ガスの観測から、階層を超えた元素とエネルギーの対循環を明らかにし、宇宙の化学進化・構造進化に迫ることである。そのために、以下の2つの研究を遂行している。1. 銀河に付随する高温プラズマの元素組成比を特定し、銀河進化と元素供給を解明する。2. 2015年打ち上げ予定のASTRO-H衛星搭載SXSカロリメータを用いて、電荷交換、共鳴散乱、ドップラーシフトなど熱平行から外れたスペクトル構造から、高温・低温ガスの相互作用やガスの運動を解明する。 1つめについては、現在公開されている「すざく」衛星の観測データを用い、早期型銀河17天体の系統的解析を行った。求められた元素組成、組成比ともに、高温ガスの温度、形態、環境によらずほぼ1太陽組成であった。現在のIa型超新星爆発の発生率を仮定して求めたla型で供給される鉄の量と星の鉄組成の和は1.7-8.3太陽組成である。本研究で求めた高温プラズマの鉄の元素組成は0.8太陽質量程度であり、Ia型超新星爆発の発生率から見積もった値より小さい。この解釈として考えられるのは、現在の白色矮星の超新星爆発発生率が低いことである。他には、現在のIa型超新星爆発で生成される物質が高温プラズマ中に拡散する前に銀河の外に逃げているのではないか、という予測がたてられており、Tang&Wang (2010)によるシミュレーションではアウトフローによって外側へ逃げて行く鉄が再現されている。以上の結果は投稿論文としてまとめ、The Astrophysical Journal 誌から出版されている。2つめについては、ASTRO-H衛星の2015年打ち上げをめざし、SXSメンバーとして衛星試験に参加している。検出器であるカロリメータを極低温の50mKまで冷やす3段式断熱消磁冷凍機(ADR)をコントロールするADRコントローラー(ADRC)の日本担当として、積極的に試験に参加し、中心メンバーとして活動している。さらに、打ち上げ後、いち早く効率的かつ精確に成果を発信するため、SXSによる銀河団中心の観測シミュレーションを行い、共鳴散乱の検出の有無を検討しており、結果を投稿論文にまとめている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き「すざく」衛星のデータ解析を行う。星形成率の異なる星生成銀河や、銀河団外縁部などの元素組成、組成比を調べ、重元素汚染について調べる。またSXSチームとして衛星試験に参加する。今年度行ったSXS観測シミュレーションについては投稿論文にまとめ出版する。
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Research Products
(3 results)