2013 Fiscal Year Annual Research Report
炭化珪素半導体の高電界物性の解明と超高耐圧パワーデバイスへの応用
Project/Area Number |
13J06049
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
丹羽 弘樹 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 炭化珪素(Sic) / パワーデバイス / 衝突イオン化係数 / フォトダイオード / 光キャリア増倍測定 / デバイスシミュレーション / PiNダイオード / 絶縁破壊特性 |
Research Abstract |
電力の効率的利用に向けてSiC (シリコンカーバイド : 炭化珪素)パワーデバイスに現在注目が集まっている。その中でも耐圧10kV以上の超高耐圧SiCデバイスは送電・変電系統における電力変換器の低損失化に有望である。しかしこのようなデバイスを対象とした基礎研究はほとんど行われておらず、正確な性能予測のもとデバイスを設計・作製し、その特性を詳細に評価するには系統的な基礎物性研究が必要となっている。本年度は特にデバイスの絶縁破壊特性の正確な性能予測に向けて、衝突イオン化係数の測定を行った。特に過去のSiCにおける衝突イオン化係数の報告における測定・解析上の問題点を洗い出し、それらを解決することで精密性の高い測定を目指した。 本研究では衝突イオン化係数の測定のためにSiCフォトダイオードを用いた光キャリア増倍測定を行った。ここで光キャリア増倍測定を行う際には、使用する励起光源の波長を計算により最適化した。過去の報告ではこの波長が不適当であり、誤差要因となっていた。次に、この測定から得られた増倍係数を用いて衝突イオン化係数を算出するが、ここでは新たな計算手法を考案し衝突イオン化係数を算出した。以上の手法により得られた衝突イオン化係数を用いて計算された絶縁破壊電圧は実測値と非常に良く一致し、正確に衝突イオン化係数が算出できたと言える。さらに、本測定を室温から200℃までの高温で行い、衝突イオン化係数の温度依存性も測定した。その結果、電子の衝突イオン化係数は測定された範囲では変化が非常に小さかったが、正孔の衝突イオン化係数は負の温度係数を示すことがわかった。 以上、本研究で得られた結果は耐圧数kV級デバイスにおいて詳細な設計・評価に用いることが出来る重要な知見である。そして今後の、超高耐圧デバイスにおいて重要な電界の範囲で衝突イオン化係数を測定するための基盤が構築できたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標は、超高耐圧SiCデバイスを目指した衝突イオン化係数の決定および物理モデルの構築であり、限られた電界の範囲ではあるが測定に成功している点から本研究は計画通りに進んでいると言える。特に温度依存性に関してはこれまでSiCにおいて実測例は非常に少なく、本研究の最終目標である超高耐圧デバイスのみならず、現在研究が最も盛んな1kV級デバイスの領域にも大きなインパクトを与えたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
超高耐圧デバイスの設計には、これまで測定を行った電界の範囲よりも低電界における値が重要となってくる。そこで、低電界における衝突イオン化係数を測定するために、耐圧維持層のドーピング密度を減少させたフォトダイオードを作製する。この際、デバイス内部で不必要な電界集中が発生しないようデバイスシミュレーションを用いて最適化を図る。そして今回と同様に様々な温度で測定を行いSiCにおける衝突イオン化係数の電界依存性とその温度依存性を明らかにする。そしてキャリアの散乱機構などを考察することでSicにおける衝突イオン化現象の物理を明らかにする。
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Research Products
(3 results)