2014 Fiscal Year Annual Research Report
炭化珪素半導体の高電界物性の解明と超高耐圧パワーデバイスへの応用
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13J06049
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
丹羽 弘樹 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 衝突イオン化係数 / 炭化珪素 / フォトダイオード / シミュレーション / パワーデバイス / 絶縁破壊 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高耐圧SiCデバイスの正確な耐圧設計を実現するために、低電界(~1 MV/cm)における衝突イオン化係数の精密測定を行った。低い電界において雪崩増倍を発生させるためにドーピング密度の低い耐圧維持層を用いたフォトダイオードを作製し、また誤差の発生要因となる電界集中を緩和するために独自の終端構造をデバイス端部に設けた。 本デバイスを用いて光キャリア増倍測定を行うことで初めに増倍係数を測定した。そして得られた増倍係数の逆バイアス電圧依存性を数学的に解析することで衝突イオン化係数の電界依存性を算出した。その結果、本デバイスを用いることで設計通り約1 MV/cm程度の低電界まで正孔の衝突イオン化係数の算出に成功した。このような低い電界における正確な測定結果は、4H-SiCにおいて初めて報告されるものである。 また高温測定も行うことで衝突イオン化係数の温度依存性を実測した。正孔の衝突イオン化係数に関しては温度上昇とともにその値は減少していった。これはSiなど他の半導体材料と同様にフォノン散乱の影響が強くなったためと考えられる。一方で電子の衝突イオン化係数は温度依存性が小さく、少なくとも150℃までは室温における測定結果と比較してほとんど変化が見られなかった。この原因については今後研究が必要である。 ここまでに得られた衝突イオン化係数の正確性を調べるために、絶縁破壊電圧の耐圧維持層ドーピング密度依存性を計算した。その結果、他の文献値における衝突イオン化係数を用いた計算結果と比較して、本研究の値を用いた計算結果が実験値をよく再現していることが分かった。耐圧10 kV級デバイスにおいても実験値をよく再現しており、本研究で得られた衝突イオン化係数が超高耐圧SiCデバイスの正確な設計・解析において非常に実用性の高いものであると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4H-SiCにおける高電界物性の解明というテーマのもと、幅広い電界の範囲における衝突イオン化係数の精密測定は順調に進んでいると考えられる。特に超高耐圧デバイスへの応用を考えた場合、本年得られた低電界における値は非常に重要な成果であり、本研究における目標の1つが達成できたと言える。また衝突イオン化係数の温度依存性は、SiCが高温動作デバイスとして期待されながら全く報告例がなかったため、今後のSiCデバイスの設計において必須となる知見である。様々なSiCデバイスへの適用を考えた場合、今回とは逆に高電界における値も重要となってくるが、それに関しては期間内に達成できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
耐圧維持層ドーピング密度が高いフォトダイオードを作製し、これまでとは逆に高電界における衝突イオン化係数の算出に取り組む。その際にはこれまで考慮する必要が無かった現象などが発生するが、解析方法の工夫によりそれらを取り入れようと考えている。 また実際の超高耐圧デバイスの作製に向けて耐圧維持層構造の最適化や、高耐圧化に向けたデバイスの接合終端構造の設計などを行う。ここでは特にこれまでの研究で得られた衝突イオン化係数を用いたデバイスシミュレーションが活躍すると考えられる。また同時に低損失化に向けた、新規デバイス構造の提案や作製プロセスの最適化を行いたい。これらの研究により、超高耐圧・低損失SiCデバイスの実現に向けた指針を提示する。
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Research Products
(4 results)