2013 Fiscal Year Annual Research Report
ワクチンハザードの克服を目指した新規経皮ナノキャリアの設計
Project/Area Number |
13J06054
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高橋 秀樹 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ナノマテリアル / 抗体産生 / ワクチン |
Research Abstract |
申請者は当該年度において、IgE非誘導性経皮抗原キャリアを開発し、ワクチンハザードを克服した経皮ナノワクチンを開発することを目的に、非晶質ナノシリカの皮膚曝露と免疫誘導能との連関情報の収集を試みた。ヤケヒョウダニ抽出物(Dp ; 1 mg/mL)、或いはDpと粒子径30nmの非晶質ナノシリカ(nSP30)の混合溶液(Dp ; 1 mg/mL、nSP30 ; 12.5 mg/mL)をNC/Ngaマウスに20μ1/ear、80μ1/backで両耳介の内側、および除毛した上背部に塗布した。また、塗布は週3回、4週間投与し、抗原特異的に誘導される抗体について解析した。その結果、Dp塗布群、Dp/nSP30塗布群の両群において、コントロール群と比較して抗原特異的IgE産生が有意に上昇した。一方で、Dp塗布群、Dp/nSP30塗布群との間では有意な差は認められなかった。また、抗原特異的lgGの産生においては、Dp塗布群ではコントロール群と比較して産生量が有意に増加していた。一方で、Dp/nSP30塗布群では、抗原特異的IgG産生がDp塗布群よりも有意に減少していた。次に、Dp/nSP30塗布群で産生が抑制されていたIgGについて、サブクラス毎に評価した。その結果、評価したすべてのサブクラスにおいてDp/nSP30塗布群で産生が抑制されていた。本結果から、全身のTh1/Th2型の獲得免疫の誘導が減弱している可能性が示された。そこで次に、全身のTh1/Th2型獲得免疫応答をELISPOTアッセイ、及びフローサイトメトリーにて評価した。本検討では、抗原特異的にIFN-γを産生する脾細胞をTh1型の免疫応答の指標として、IL-4を産生する脾細胞をTh2型の指標として評価した。その結果、非晶質ナノシリカは全身性の獲得免疫応答の誘導を減弱することなく抗原特異的IgGの産生のみを抑制することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度においては、非晶質ナノシリカを抗原と共に皮膚曝露することでIgE抗体のみが誘導されるという申請者らが発見した現象のメカニズム解明に向け、非晶質ナノシリカ曝露後に誘導される免疫を抗体産生と全身の獲得免疫の誘導という視点から解析した。その結果、非晶質ナノシリカの曝露は、全身の獲得免疫の誘導を抑制しない一方で、様々なサブタイプのIgG抗体の産生のみを抑制することが明らかとなった。本検討はまだまだ基礎的な検討ではあるものの、非晶質ナノシリカのIgG抗体誘導を抑制するメカニズム解明に向けた貴重な一歩であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度に検討において、非晶質ナノシリカは全身性の獲得免疫応答の誘導を減弱することなく抗原特異的抗体の産生のみを抑制することが明らかとなった。一方で、全身の免疫応答がTh1型、Th2型に大別されることは事実であるが、近年、獲得免疫応答を制御するT細胞の分類が進み、過剰な免疫応答を抑制する様々なT細胞サブセットがそれぞれ独自に獲得免疫応答の制御に関わっていることが明らかとなってきている。そこで今後は、獲得免疫応答を制御するこれらT細胞サブセットについて解析することで、抗体産生メカニズムの解明を、ひいてはIgE非誘導性経皮抗原キャリアの開発及びワクチンハザードを克服した経皮ナノワクチンの開発を目指す。
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Research Products
(3 results)