2013 Fiscal Year Annual Research Report
霊長類認知記憶システムにおける前頭・側頭葉間連絡の光遺伝学的標識及び機能制御
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13J06060
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松山 真 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | レンチウイルスベクター / ラット大脳 / 鶏白血病ウイルス / 視床皮質路 |
Research Abstract |
課題に対して平成24年度には、ニワトリ白血病ウイルス(ASLV)の感染受容体5種類または組み換えキメラ受容体1種類を発現する6種類のレンチウイルスベクターと、鶏白血病ウイルス(ASLV)のエンベロープタンパク質4種類を有する4種類のレンチウイルスベクターを新規に作製した。これらの受容体とエンベロープには特性があり、ある受容体を有する鳥類細胞には特定のエンベロープを有するASLVしか感染しないという報告がある。私は複数の神経経路に対する特異的遺伝子導入にこの性質を利用しようと試みた。 平成25年度にはまず、哺乳類細胞とラット大脳を用いて、ASLVの感染受容体6種類×エンベロープ4種類の24通りのペアにおける感染特性の定性的なスクリーニングを行った。このスクリーニングで見つかった受容体とエンベロープのペア3種類は、ペア以外の組合わせでは殆ど感染が起こらないという性質を有しており、複数の神経経路に対する特異的遺伝子導入という目的に適うものであった。最終的には3種類の受容体全てを同時発現させたラットにおいて、投射先の異なる神経細胞が異なる蛍光タンパク質を発現し局所の脳領域で入り乱れている結果が得られたことで、局所回路の神経投射経路を選択的・同時的に3つまで遺伝的に標識できることが確認された。 申請書の段階では2つの受容体エンベロープの組み合わせが見つかることを期待していたが、最終的に3つの組合わせを見出すことが出来た。そしてこれら3つの組合わせの感染特異性や効率は神経回路に適用する上で十分高く、実際にラット大脳に複数の神経経路特異的に遺伝子導入するところまで研究を進めた。現在はここまでの結果を基に論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
私が昨年度に上げた成果は申請書作成時点での期待を上回り、抗原賦活化処理法の改良、ラット大脳におけるタンパク質検出用のエピトープタグの設計、そして3つの受容体とエンベロープのペアを見出すことが出来たことの3点である。しかし前2者の成果は研究途上で生じた問題へ対処する為に行われ、それ自体を目的としたわけではない。結果として問題解決に時間を要した結果、申請書に記載のサルのトレーニングを行うまでには至らなかった。とはいえ申請書では初年度は遺伝子導入法の開発、次年度はサルへの適用の2ステップで進める予定としており、初年度の目標であった最初のステップを期待以上に終了したため②という評価にした。
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Strategy for Future Research Activity |
まず初年度で得た実験成果について学会発表、論文発表を行い、開発した手法の周知に努める予定である。一方で当初予定していたサルのトレーニングと、トレーニング後のサルへの遺伝子導入については1年の内に完了しない可能性がある。そして次年度で所属研究室が解散する為、完了しなかった場合の研究の継続は困難である。したがってトレーニングと並行して、開発した手法を用いたサルへの遺伝子導入、光遺伝学と組合わせた機能実験、本手法の更なる改良等について実験を行い、それぞれについて成果が上がり次第順次公表していく予定である。
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Research Products
(4 results)