2013 Fiscal Year Annual Research Report
危機言語の維持・再活性化と言語名、言語意識-「フランコプロヴァンス語」を巡って
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13J06070
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
佐野 彩 一橋大学, 大学院言語社会研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 社会言語学 / 危機言語 / 言語維持・再活性化 / 言語意識 / 言語名 / 言語運動 / フランコプロヴァンス語 / フランス : イタリア : スイス |
Research Abstract |
本研究は、ヨーロッパの危機・少数言語の一つであるフランコプロヴァンス語について、言語に言及する際に用いられる複数の言語名に着目して、この言語に対する言語意識の変遷・現状を調査し、言語に与える名称と言語意識が危機・少数言語の言語維持・再活性化に及ぼす影響を明らかにするものである。 1年目にあたる平成25年度は現地調査を中心に研究を進めた。 まず、8月下旬にスイスで開催された国際フランコプロヴァンス語祭に参加し、参与観察を行ったほか、言語運動家へのインタビュー調査、文献・資料の収集を行った。この調査では特に、これまで研究代表者が現地調査を行ったことのなかったスイスにおけるフランコプロヴァンス語の社会言語学的状況を把握し、今後の研究で活かされる言語運動家や研究者とのネットワークを広げることができた。 9月末以降は研究指導の委託により、フランスの言語動態学研究所(CNRS/リュミエール・リヨン第2大学)に訪問研究員として研究滞在し、現地調査を実施した。平成25年度はフランスにおける調査に重点を置き、言語団体の活動などに参加して参与観察を行ったほか、ピエール・ガルデット研究所(リヨン・カトリック大学)などで文献・資料を収集した。インタビュー調査は予備調査的なものに留まったが、参与観察の期間を設けたことで、言語団体の活動とそこでの言語使用状況の実態を明らかにできた。さらに、言語運動において用いられる言語の名称とそれに関係する言語意識の概要を参与観察および文献・資料によって検討したことで、次年度に実施するインタビュー調査における調査項目が精緻化された。 なお、平成25年度は現地調査のほかに、収集した文献・資料およびデータを整理・検討し、論文の執筆を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画からの変更点としては、平成25年度後半の現地調査で、フランスに含まれる地域に重点を置いたこと、言語団体の活動などを参与観察する期間を設けたことがある。当初予定していたインタビュー調査中心の方法は採らなかったが、言語団体の活動と言語使用状況の実態を明らかにでき、また平成26年度に行う言語名および言語意識に関するインタビュー調査の設問もより実態に即した内容になったため、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目にあたる平成26年度の前半は、現地調査を継続して実施する。とりわけインタビュー調査に重点を置き、フランスに含まれる地域を中心に、イタリア、スイスでも調査を行う予定である。平成26年度の後半は日本に帰国し、現地調査で収集したデータ、文献・資料をもとに、学会発表および論文執筆を行う。
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