2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J06143
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
宮城島 要 早稲田大学, 政治経済学術院, 特別研究員PD
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Keywords | 公平性 / 機会の平等 / 社会厚生 |
Research Abstract |
個々人が異なる選好と生産スキルを持つ生産経済モデルにおいて、「機会の平等」を補償する資源配分メカニズムに関する研究について、最終稿を作成し専門学術誌に投稿した。この研究は、消費者の選択機会としての予算集合の分配問題に関係している。 また、不可分財のモデルにおいて、資源配分を評価する社会的順序に関する研究を行った。この研究では、パレート効率性や、各人が一番好ましい財を持っている状態での所得の平等を要求する公平性などの条件から、ある一つの社会厚生関数を導出した。この社会厚生関数に基づく最適な配分においては、誰も他人の消費バンドルを自分の物より好むことの無い無羨望状態が達成される。また、誘因両立制約を課した場合には、次善の配分を遂行するメカニズムを発見した。この研究は、機会の平等を達成するメカニズムの研究における貢献となる。 もう一つの研究として、各個人がジョブサーチを行なうモデルを考え、職が得られないリスクに直面した場合において、「機会の平等」の観点から資源配分の評価方法を検討した。各個人が就職活動を行うが、正の確率で職に就けない場合があるモデルを考える。ここでは、配分の評価方法として、事後的に得られる収入の確実同値額がもっとも低い個人をより高くなる事が望ましいと判断する社会厚生関数を考えた。この社会厚生関数が、パレート原理と、収入の期待値を等しくする事が望ましいと判断するある種の機会の平等原理から導出される事を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在進めている研究について、様々な興味深い結果が得られている。特に、機会の平等の観点から不可分財の公平な配分を達成するための研究については、当初予想しなかった面白い結果が得られた。よって、本研究は順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、機会の平等の観点から、これまでとは別の公平性の公理を導入し、不可分財や不確実性のモデルでの社会厚生関数をさらに導出したい。方向性としては、不可分財のモデルにおいて、貨幣等価原理と呼ばれる、公平な資源配分問題で有名な基準を応用し、不可分財を持たない状況での所得の平等を公平性の基準として考えたい。また、それらの社会基準に関する、誘因両立制約を考慮した次善の配分を考え、どのような制度がありうるのか考察したい。ジョブサーチモデルにおける機会の平等の研究では、職探しをする以前における「事前の平等」を達成するような失業保険制度を導出したい。さらに、機会の評価に関する指標も考察したい。
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