2014 Fiscal Year Annual Research Report
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13J06143
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
宮城島 要 早稲田大学, 政治経済学術院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 公平な社会的順序 / 機会の平等 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は主に二つの研究を進めた。一つは、不可分財と貨幣のモデルにおいて、社会厚生関数の構築と特徴付けを行なった。この研究においては、家などの不可分財として扱われるのが適切で、なおかつ人々の生活にとって重要な財の分配状態をどのように評価し、また不可分財を含めてどのような分配政策を行なうかを決定するために、この経済環境での社会厚生関数を構築する事は重要なテーマであると考えられる。特に、家を持てるかどうかは、良い生活の機会を持つ上で重要であると考えられる。この研究では、機会の平等とパレート原理を満たす貨幣等価原理という社会厚生関数を特徴づけた。 二つ目の研究では、将来の所得が不確実なモデルを用いて、公平性と効率性を満たす社会厚生関数を構築する研究を行った。この研究では、非常に弱い効率性と社会的合理性の原理と公平性が両立するような社会厚生関数を導出した。効率性の条件として、Pareto for Equal Riskという公理を導入した。この公理は、人々が同じ選好をもち、同じプロスペクトを持ちながら状態が改善するような変化は、社会的に選考される事を要求する。社会的な合理性としては、社会厚生関数が各選好プロファイルに応じて順序を導出する事を仮定した。これらの公理を課した上で、公平性の公理の強さに応じて、異なる二つの社会厚生関数を導出した。 また、3本の論文が査読付き国際学術誌に受理された。2本は効用の無限流列を評価する方法を研究したものであり、もう1本は教育におけるアファーマティブアクションの最適性に関する論文である。特に、”Liberal Egalitarianism and the Harm Principle”というタイトルの論文は、イギリスの有名な学術誌Economic Journalに、掲載が決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度に精力的に行った、機会の平等や自由を考慮した社会的判断基準の構築は、本研究の柱となる研究テーマである。この研究については、「公平な社会選択の理論」というツールを用いてアプローチし、最先端の問題を探求し、予想以上のよい結果を得られたと考えている。 まず、不確実性下での社会選択の研究に関して、将来の所得が不確実な際にリスクをどのように公平にシェアするかという問題は、人々の機会を平等にするという観点から非常に重要である。その問題を考えるにあたって、通常のパレート原理があまり説得的ではないため、非常に弱い効率性を用いたが、そこから非常にはっきりとした社会厚生関数を導出できたのは、予想外の発見であった。 次に、不可分財と貨幣のモデルにおける社会選択問題に関して、魅力的な公理から、シンプルな社会厚生関数が導出できた。不可分財の例として「家」がよく用いられるが、家を持つかどうかは人々のよりよい生活の機会として重要であり、そのような不可分財を含めた形で予算の分配問題を進展できた。 また、不介入という意味での個人の自由を表すHarm Principleの概念を公理として定式化し、その公理を用いてマキシミン社会厚生関数を特徴づけた論文を通じて、予想以上の成果を挙げることができた。この論文は、リベラルな不介入主義が、マキシミンという平等基準を導出するという論理関係を明らかにした。この論文は有名な経済学術誌Economic Journalに受理された。
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Strategy for Future Research Activity |
まず不確実性下の社会選択問題に関しては、これまで導出した社会厚生関数を用いて、政府が人々に関する情報を不正確にしか知らない「情報の非対称性」の状況において最適配分を導き出し、機会としての予算集合をできるだけ平等にするような配分を遂行するような制度の構築を行ないたい。 また、より魅力的な効率性原理を新たに導入し、新しい社会厚生関数の公理化も行ないたい。現在アイデアのとして、人々がリスクのない状況からリスクのある状況に移る際に、人々が同様のリスクをとりつつ状態が改善している場合には、社会的にも改善とみなす公理である。この公理と、公平性、分離可能性などの公理を組み合わせて、社会厚生関数の特徴付けを行ないたい。 その他に、世代重複モデルのような動学的な状況において、将来の状態が不確実なモデルを考え、人々の機会を平等にするような制度を構築するための社会選択理論を考えたい。この研究によって、現在のみでなく将来にまたがる機会の平等について研究できると考えている。 さらに、個人の予算集合の評価についても研究したい。従来の予算集合の評価の基準は、各財のウェイトが外性的に与えられていたが、これを内生的に決定する方法を開発しつつある。これを選好と組み合わせて、財のウェイトを選好を用いた形で導出できる方法を開発したい。また、将来の所得が不確実な状況において、機会の平等を個人間で測るためにも、個人の機会が評価どのように評価されるべきかを考えるのが重要だと考えている。
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