2013 Fiscal Year Annual Research Report
フロスタノイド受容体CRTH2を標的とした精神疾患の橋渡し研究
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13J06144
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
尾中 勇祐 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | CRTH2 / ノルアドレナリン神経 / 海馬 / 認知機能 |
Research Abstract |
本研究では、これまでに研究代表者らが見出してきた情動・認知機能障害におけるCRTH2の役割について、その分子基盤や神経基盤などのメカニズムを明らかにすることを目的としている。本年度は以下の結果を得た。 1) HPLCを川いてCRTH2欠損(KO)マウスおよび同腹の野生型マウスの脳内モノアミン含量測定を行ったところ、野生型と比べてCRTH2-KOマウスの海馬ノルアドレナリンの代謝産物の含量が多いことを見出した。また、コルチコステロンの慢性投与により、野生型とCRTH2-KOマウスでは、海馬におけるノルアドレナリンの代謝回転が同程度に増加することがわかった。一方で、ドパミンおよびセロトニンならびにそれぞれの代謝産物の含量については、コルチコステロン慢性投与あるいはCRTH2の欠損による影響は認められなかった。これらの結果はCRTH2の特定のモノアミン神経系への関与を示した初めての知見である。 2) リポフェクション法により、マウス神経芽細胞腫由来のNeuro2Aに、CRTH2発現ベクターとともにCRTH2のノックダウンベクターを導入して検討を行った結果、CRTH2 mRNAレベルがノックダウンベクターの導入によって約20%まで抑制されることを確認した。 3) CRTH2-KOマウスおよび同腹の野生型マウスを用いて、Y-mazc試験、fear-conditioning試験、rota-rod試験を行った結果、すべての試験においてKOマウスの認知機能は野生型マウスと同等であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、CRRH2のノックダウン系をin vitroで確立すると共に、CRTH2-KOマウスにおいて定常時の認知機能評価を達成した。MAP kinaseの活性化についての検討は未実施であり、うつ病患者のサンプルを用いた一塩基多型の解析についても、ジェノタイピング時のDNA収集効率等に問題があり進んでいない。しかしその一方で、モノアミン系に注目した検討から、セロトニンではなくノルアドレナリン神経の機能制御にCRTH2が関与するという予想外の知見を見出した。これらを総合し、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
CRTH2が関与する認知・情動機能障害のメカニズム解析について、CRTH2-KOマウスを用いた各種病態モデルにおける、扁桃体等のc-Fos発現変化や、MAP kinase活性変化等を指標に評価する。脳神経核特異的なCRTH2の機能解析については、レンチウィルスによるノックダウンが達成困難な場合に備え、CRTH2のアンタゴニストを脳実質内に投与する検討を同時に進める。認知機能調節おけるCRTH2の役割について、定常状態の認知機能調節へのCRTH2の関与は認められなかったことから、MK-801の投与モデルにおける認知機能障害への関与を評価する。うつ病態におけるCRTH2の臨床的意義の機能解明に関しては、臨床で既に末梢炎症病態に対する治療薬として使用されているCRTH2拮抗薬が病態モデル動物のうつ様行動に与える影響を評価する予定である。
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Research Products
(5 results)