2013 Fiscal Year Annual Research Report
人為的piRNA誘導システムによるDNAメチル化制御
Project/Area Number |
13J06162
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊藤 大介 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | DNAメチル化 / 精子形成 / piRNA / エピジェネティクス |
Research Abstract |
piRNA (PIWI-interating RNA)は、長さ25-31塩基長程度の小分子RNAであり、胎仔期雄性生殖細胞においてDNAのメチル化を介したレトロトランスポゾン遺伝子の抑制に寄与している。胎仔期piRAAの大規模解析から、piRNAは、その大部分がレトロトランスポゾン配列を持つこと、および、ゲノム上のpiRNAクラスターと呼ばれる領域に由来すること、が明らかとなった。これらの知見から、piRNAの産生にはpiRNAクラスターからの転写産物が必要ではないかと考えられてきた。この仮説に反し、当研究員はEGFP (Enhanced green fluorescent protein)の発現を指標とした実験を駆使し、胎仔期精巣におけるセンス・アンチセンス鎖の単純な発現によってpiRNAの産生を介したDNAメチル化を人為的に誘導できるシステムを構築した。 本年度では、次世代シークエンサーを用いた解析により、EGFPに対するpiRNAが実際に産生されていること、およびEGFP遺伝子のどのような領域から産生されているのかが明らかになった。このシステムが内在性遺伝子に対して応用できるかを調べるため、Dnmt3L (DNA methyltransferase3-like)という、精子形成に必須の遺伝子に対してアンチセンス鎖を発現するトランスジェニックマウスを作製した。Dnmt3L欠損マウスの表現型と同様、このマウスは精子形成不全を示した。また、このマウスの生殖細胞においてDnmt3Lの発現が非常に低下していること、そしてDnmt3L遺伝子座が高メチル化状態であることが明らかになった。さらに、次世代シークエンサーによる解析から、Dnmt3L遺伝子に対するpiRNAが多数産生されていることが実証された。以上の結果は、単純な胎仔期雄性生殖細胞においてセンス・アンチセンス鎖の発現により、内在性の遺伝子に対してであっても、piRNAの産生と配列特異的なDNAメチル化の誘導が可能であることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
piRNA経路を利用したDNAメチル化システムが内在の遺伝子に対して適用可能である可能性は低く、トランスジェニックマウスを使用する実験であることから、時間がかかることが予想されていた。しかしながら上記のような結果を研究開始からわずか1年で出すことができたため、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、上述のシステムを用い、胎仔期精巣で発現する機能未知な内在性遺伝子のノックダウン、およびその機能解析をおこなっている最中である。また、今後はこのシステムのさらなる拡大を目的とし、生殖細胞で人為的に誘導されたDNAのメチル化が次世代にどう継承されるか、という研究に着手する。インプリント遺伝子や家族性がんの原因遺伝子に対して人為的にDNAメチル化を誘導した精子を受精させ、DNAメチル化の破綻と疾患、および発生異常の因果関係を明らかにする。非常に挑戦的な内容ではあるが、現在のところこれといった問題点は見当たらないため、研究を継続する予定である。
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Research Products
(2 results)