2013 Fiscal Year Annual Research Report
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13J06283
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大槻 知貴 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 非摂動的場の量子論 / 共形場の理論 / 相転移 |
Research Abstract |
本年度は、専ら共形場の理論(Conformal Field Theory, 以下CFT)について、共形ブートストラップ法というアプローチを用いた研究を行った。このアプローチは、CFTのキネマティクス、すなわち、共形不変性や相関関数の解析性のみから出発して、CFT全般に対する制限を得ようというものである。勿論、得られる一般的な制限はそれ自体興味深いものであるが、ブートストラップ法がもたらす情報はそれだけではなく、転移点でのIsing模型やハイゼンベルク模型のようなある種のCFTが"再発見"され、逆にこの方法から臨界指数などの非自明な情報を再現できることが分かっている。この方法は、超対称性を仮定しないにも関わらず非摂動的であり、しかもラグランジアンすら必要がない。しかし、(1)なぜこのようなことが可能なのか、(2)Ising模型やハイゼンベルク模型以外のような特定の模型ではなく、あらゆるCFTに対してこのような"再発見"は可能なのか、という2点は謎に包まれている。 筆者らは、ブートストラップ法をSO(3)×SO(N)対称性を持つ系に対して適用した。これらの系が興味深いのは、Nの値によってはハイゼンベルク型とガウス型以外の固定点の存在が予言されていることである。対称性を固定した時に固定点がガウスを除いても複数あるような(すなわち、普遍性のアイデアが素朴には成り立たない)場合についてのブートストラップ法の適用はこれが初めてである。結果、ブートストラップ法に現れる線形最適化問題のターゲット関数として、通常とは別のものを用意することで、(ハイゼンベルク型とは)異なる固定点に対応する最適解が得られることが判明した。(1)に対しての答えと直接関係があるわけではないが、(1)が明らかにされた際には固定点の存在/非存在という(摂動論では答えられない)問題にもブートストラップ法で決着がつけられうるという更なるモチベーションを与えたこと、そしてIsing (Heisenberg)モデル以外にもブートストラップ法で答えが見つかる例を明らかにしたことで、(1)と(2)のどちらにも進展をもたらすことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画において述べた、3次元Heisenbergモデルに対するブートストラップ法の適用は、他のグループによって13年7月に現れた論文(http://arxiv.org/abs/arXiv:1307.6856)において成されたために筆者の業績とはならなかったが、それまでの蓄積があったために、すぐに新たなメソッドに適応し、Heisenberg模型よりも非自明なモデルへブートストラップ法を適用することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ブートストラップ法の研究は当初の見通しより急速に進んでいるため、今後はメソッド自体に対する研究に加えて、メソッドの他問題への応用が重要になってくる。そこで、今後は今までの蓄積がすぐに適用できるカイラル相転移に応用があるモデルや、フラストレーションがある反磁性体の相転移などにブートストラップ法を応用する。これらは非常に興味深い一方、数値計算に多大な時間を要するため、その合間を縫って、これまで誰も着手していない、複数の演算子積展開係数が可能な場合の四点関数(最も重要なのはエネルギー運動量テンソル保存カレントのそれである)に対するブートストラップ法の適用を目指す。
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Research Products
(1 results)