2014 Fiscal Year Annual Research Report
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13J06283
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大槻 知貴 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 相転移 / 共形場の理論 / 非摂動的場の量子論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、「共形ブートストラップ」と呼ばれる手法を用いて、高次元(3次元以上) 共形場理論の探索を行った。共形ブートストラップは、高次元共形場理論を指定するパラメータ空間について、非自明な制限を与える。これが近年注目されているのは、得られた許されるパラメータ領域に特異点が現れることがあり、しかもその特異点には、イジング模型などの非自明な共形場理論がある、という事実が明らかになったからである。 さて、2014年になって、4次元以下で馴染み深いO(N)ベクター模型と呼ばれる共形場理論が、実は5次元でも存在するという大胆な予想がなされた。我々は、 O(N)対称性をもつ5次元の共形場理論全体に対して、許されるパラメータ領域を共形ブートストラップの方法により求めた。すると、3次元のイジング模型と同様に、そこには特異点が存在し、しかもその点は摂動論の予言と一致することが分かった。このようにして、上記の主張に対して決定的な証拠を与えることができた。 また、O(n)×O(m)対称な3次元ランダウ-ギンツブルク模型の固定点も探索した。これらはフラストレート磁性体の相転移やQCDカイラル相転移など、豊富な応用をもつが、その解析は著しく困難であることが知られており、特に重要な場合に固定点をもつか否かは永らく未解明であった。我々は、O(n)×O(m)対称性をもつ3次元の共形場理論全体に対して、許されるパラメータ領域を共形ブートストラップの方法により求めた。すると、これまでと同様に特異点が現れ、しかもその特異点においては、6つの非自明な実数パラメータが、高次の摂動論による予言と誤差の範囲で一致することが分かった。このような一致もまた、実際に固定点が存在しない限り、説明は不可能と思われるので、共形ブートストラップの方法により、この論争に終止符が打たれたこととなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
QCDカイラル相転移やフラストレート磁性体の相転移という、注目度が大きい話題であるにも関わらず、その性質に決着がついていなかった問題を実際上解決したことは、大きな成果であると自負している。 また、5次元O(N)ベクター模型などといった、これまで存在が予想だにされていなかった模型の存在についても決定的な証拠を与えたことはインパクトが大きい。 本年度は共形ブートストラップの手法自体への貢献はなかったのだが、上述のように応用面での貢献は大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までは単一の4点相関関数の無矛盾性から得られる条件を用いているに過ぎなかったが、ごく最近になって複数種類の相関関数の無矛盾性条件を考えることが可能になり、既にイジング模型に対しては臨界指数について厳密かつ、既存の方法を大きく上回る精度で制限が得られている。 5次元O(N)ベクター模型やフラストレート系などにも複数種類の相関関数からくる無矛盾性条件を考えることは興味深い。
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Research Products
(4 results)