2013 Fiscal Year Annual Research Report
家族関係と幸福度に関する大規模サーベイデータを用いた実証分析
Project/Area Number |
13J06294
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊角 彩 大阪大学, 大学院国際公共政策研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 幸福度 / 生活満足度 / ウェルビーイング / 家族関係 / 若者 / 高齢者 / 結婚 / 子育て |
Research Abstract |
本研究は、家族内の人間関係が幸福度にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的としている。初年度である本年度は、ライフステージのうち、とくに若者と高齢者に注目し、それぞれの年代の人々が持つ家族関係と幸福度の関係について、既存研究を調査し、計量分析を行った。若者に関しては、家族の経済状況や若者の健康状態をコントロールした上で、家族形態や親子関係が主観的幸福度および精神的健康にどのような影響を与えるかについて検討した。データは内閣府が行った「生活の質に関する調査」の第1回・第2回の個票データを用いた。高齢者に関しては、子との同居の内生性を考慮した上で、子との同居が高齢者の生活満足度に与える影響を分析した。データは、「老研―ミシガン大―東大 全国高齢者パネル調査(Wave6)」の個票データを用いた。これらの研究に関して、国内外における学会発表や論文執筆・投稿を行ったことを通じて、ライフステージごとに家族関係は変容し、それらが幸福度に与える影響も異なることが明らかとなり、ライフステージやライフイベントに注目して幸福度を論じることの意義を再確認することができた。 本研究で注目するライフイベントのひとつである子育てに関しては、アメリカを訪問し、子育て支援プログラムの評価に関する研究について、その分野で活躍されている研究者を対象にヒアリング調査を行った。とくに、研究によって効果が実証されている家庭訪問支援プログラムをいくつか取り上げ、それらのプログラムが親のウェルビーイングをどのように向上しているかについて学ぶことができた。さらに、今後日本でこのような研究を行うために何が必要となるか、日本の既存研究や学会報告などから習得した知識をもとに議論を行った。また、神奈川県茅ヶ崎市で実施されている親支援プログラムの効果測定に研究協力者として携わることができたことも、来年度の研究へとつながる実績である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に基づき、既存研究の整理、日本の大規模アンケート調査のデータを用いた計量分析を行い、異なるライフステージにおける家族関係が幸福度に与える影響を明らかにすることができた。また、計画通り、10~11月に海外の研究機関を訪れ、家族のウェルビーイングを高めるためのプログラムについても調査を行い、子育て支援プログラムの効果や評価について一定の示唆を得ることができた。なお、3月24日~30日に予定していたアメリカ訪問(学会参加・研究機関訪問)を感染性胃腸炎のためキャンセルしましたが、一部の研究者とは後日電話にて議論を交わし、子育て支援プログラムに関する研究についてさらなる知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、子育てと親の幸福度に関する研究をさらに進めるとともに、結婚が幸福に与える長期的な影響についても計量分析を行う予定である。また、研究実施計画にあるように、海外のデータとの比較研究も加えた上で、日本の家族の幸福度の向上のためにはどのような政策提言ができるか考察する。本年度、日本での子育て支援プログラムの効果測定に携わる機会が得られたので、今後も効果測定に関する研究を継続していく予定である。海外の子育て支援プログラムより日本の子育て支援プログラムの効果を明らかにする方が本研究にとって重要と考えるため、北米の研究機関での調査は当初の計画よりは短期的な訪問になる可能性は大きいが、日本の子育て支援プログラムの効果測定について海外の研究者に指導や助言を求めたいと考えている。
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Research Products
(5 results)