2013 Fiscal Year Annual Research Report
細胞骨格リモデリングと連動した核内アクチン量の変化によるエピゲノム制御機構の解明
Project/Area Number |
13J06326
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山崎 祥他 東北大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | アクチン / 核内アクチンリモデリング / 共焦点顕微鏡 / 初期化因子 / アクチンタンパク質 / Arp4 / エピジェネティクス / Oct4 |
Research Abstract |
発生・分化・腫瘍化など、細胞の形態・性質の発現には多様な遺伝子の発現変化が伴い、その制御因子として核内アクチンが近年注目され始めている。しかし、核内アクチンの詳細な制御機構は不明である。そこで本研究では、人為的に核内のアクチン量を増加させることで、核内アクチンの挙動や遺伝子発現への影響を解析した。まず、核移行シグナル(NLS)と蛍光タグを付加したアクチンをHeLa細胞内で発現させることで、核アクチンの挙動解析のための実験系を確立した。この実験系を用いて、共焦点顕微鏡によるアクチンの挙動解析を行ったところ、細胞質と比較してアクチン重合体が形成され難いが、アクチン密度の上昇によって、核内においてもアクチンフィラメントが形成されることを見出した。次に、遺伝子発現への影響を解析するため、マイクロアレイによる網羅的な解析を行った。その結果、初期化因子であり、核内アクチンの重合によって発現が誘導されるOct4遺伝子など、多数の遺伝子発現に変化が認められた。これらの結果から、核内アクチンの重合化が、転写制御に関与していることが示唆された。そこで次に、アクチンの重合阻害機能が報告されているArp4に注目し解析を行った。まず、siRNAによりArp4のノックダウン(KD)実験を行い、アクチンへの影響を共焦点顕微鏡により解析した。その結果、核内における局在量の増加に加え、アクチンの重合促進が観察された。次に、この細胞を用いてOct4遺伝子の発現量を解析したところ、有意に発現上昇が認められた。さらに、Arp4KDとNLS付加アクチンの発現系の組み合わせでは、Oct4発現の誘導に相乗効果が認められた。これらの結果から、核内アクチンの局在量やその形態変化が転写制御などのエピジェネティクス制御に関与していること、核内にはArp4など細胞質とは異なるアクチン制御系が働いていることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
核移行シグナルを付加したアクチンを用いることで、細胞の輸送因子に影響を与えることなく細胞核内のアクチン挙動を観察することが可能となった。この実験系と顕微鏡観察を組み合わせることで、核内のアクチンダイナミクスを解析することが容易となり、新たな知見を多く得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
核移行アクチンの実験系を用いることで、核内のアクチンダイナミクスが細胞の増殖や分化にどのような影響を与えるかを解析する。具体的には、1. Wntシグナルなどのシグナル因子への核内アクチンの関与、2. 細胞周期や分裂期への関与について研究を行う。細胞の固定による共焦点顕微鏡を用いた観察では、細胞の分裂時間や細胞質分裂などの表現型を解析することが難しいため、Wide-field型の蛍光顕微鏡によるタイムラプス観察により、時系列的に細胞の挙動を観察することでこれらの問題を解決する。
|
Research Products
(2 results)