2013 Fiscal Year Annual Research Report
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13J06359
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
神山 菜美子 東北大学, 大学院生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 四肢 / Hox / 多様性 / 骨格 / 形態形成 |
Research Abstract |
私は、"動物形態の多様性(種間差)を創出するメカニズム"を明らかにすることを目的に研究を進めている。特に、四肢の軛脚部(肘から手首、膝から足首までの領域)の骨格形態に着目し、異種間または前肢後肢間での形態差がどのような発生メカニズムによって生じるのかを研究してきた。これまでに、軛脚部におけるHoxd11/Hoxd12という遺伝子の発現時期と、骨格形態との間に相関がみられることを明らかにし、この2つの遣伝子の発現パターンの違いが骨格形態の多様性形成に寄与する可能性を示した。 今年度、Hox遺伝子の発現解析をさらに進めた結果、ニワトリ胚の前肢後肢間において、軛脚部でのHoxd11/d12発現パターンは、時空間的だけでなく量的にも違いがあることを示した。さらに、これらのHox遺伝子が、胚発生中の骨格形態の形成過程のうち、どのタイミングで起きるどのイベントに関わるのかを調べるために、軛脚部の2本の骨格それぞれの起源となる間充織細胞の性質についてinvitroの解析を行った。その結果、間充織細胞が軟骨分化するときの様子に明らかな前肢後肢差がみられた。また後肢でのみ、2つの骨格形成領域の間にも軟骨分化状態に違いがあることが明らかとなった。この後肢軛脚部における骨格形成領域間の間充織細胞の軟骨分化の違いは、これまで知られていなかった新しい発見であり、骨格形態の違いと強い相関がみられることから、骨格の形態差を生み出すメカニズムの解明の足掛かりとなることが期待される。現在は、この軟骨分化の違いとHox発現パターンの違い、最終的な形態差の3者の関係について解析を進めている。 以上のことをまとめて、今年度は2回の学会発表を行った。私の専門である発生学に関連した学会だけでなく、異分野(ゲノミクス)のシンポジウムにも参加した。多くの異分野の研究者の方と意見交換ができたことは、本研究にとって大きな収穫だった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、本研究の3か年計画の準備期間であった。「9. 研究実績の概要」に示した以外にも、ニワトリ胚を用いた強制発現実験やトランスクリプトーム解析など次の実験解析の準備は進んでいるため、達成度を上記の区分とした。
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Strategy for Future Research Activity |
1)ニワトリ胚後肢軛脚部に対するHoxd11/d12の遺伝子導入について、前年度に行った条件検討の結果を踏まえて実験を進める。Hox遺伝子と骨格形態との関係について調べる。 2)ニワトリ胚の軛脚部の2本の骨格それぞれの起源となる間充織組織についてトランスクリプトーム解析を行い、Hox遺伝子以外にも骨形態に影響しうる遺伝子の探索を行う。 3)軛脚部の2本の骨格それぞれの起源となる間充織細胞についてin vitroの解析を行うことにより、Hox遺伝子の発現状態とその後に起きる軟骨分化との関連について調べる。
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