Research Abstract |
近年の構造物の大スパン化に伴い, 梁スパンが10~20m, 梁せいが1000mm以上の大断面梁が用いられていることが多い。このとき, 材長方向に連続的に取りつく屋根折板や取り付け間隔が短い母屋材であれば, 補剛箇所の応力状態の影響を抑えられる。さらに, スラブや屋根折板のように梁の材長方向に連続補剛される場合, 従来の横補剛材とは異なり, 補剛位置で梁の座屈変形を完全拘束できるとは限らないが, ある程度の補剛剛性を有するため, 梁の横座屈耐力の向上が期待できる。 既往の研究では等曲げモーメントを受けるH形鋼梁の横座屈荷重に対する連続補剛材の拘束効果を把握したが, 実構造物に作用する長期荷重や地震外力によって梁には, 勾配モーメントが生じる。さらに, 梁が繰返し載荷を受ける場合, 補剛材が上フランジに取り付く場合を想定した場合, 上フランジに圧縮応力だけでなく, 引張応力が大きく生じる場合が考えられる。 そこで, 逆対称曲げモーメントを受ける梁の梁端から反曲点位置までの区間を対象とし, 主に引張側フランジのみで一点補剛した場合のH形鋼梁の横座屈荷重に対するモーメント勾配, 補剛位置, 補剛剛性の影響について明らかにした。また, 連続補剛材の水平及び回転補剛剛性が梁の横座屈荷重に及ぼす影響について把握した。以下に主な成果を示す。 1. 連続補剛材を材長方向に連続的に取り付く単位幅当たりの水平及び回転バネ剛性に置換し, 最も基本的な荷重条件として軸力と等曲げモーメントを受けるH形鋼簗が上フランジで連続補剛された場合の弾性横座屈荷重式を誘導し, 連続補剛材の補剛剛性と梁の横座屈荷重との関係を明らかした。 2. 弾塑性大変形解析を行い, 連続補剛されたH形鋼梁の弾塑性横座屈性状と弾塑性横座屈耐力を明らかにし, 梁の横座屈応力度設計式として, 前述の新たな一般化細長比を用いることで, 現行の設計指針め座屈曲線によって連続補剛された梁の弾塑性横座屈モーメントを評価した。 以上のように, 現行の設計指針における補剛規定は主材に対して一点補剛の場合であるが, 床スラブや屋根折板のように連続補剛の場合の弾塑性横座屈応力度(f_b)を算定できる手法を示した。また, この研究成果は既存建物の非構造部材に対しても適用することができる。そして, 連続補剛材として考えらえる, 床スラブや屋根折板のような設計時に想定されていない非構造部材を含む構造物全体の耐震性能を適切に評価することで, 大空間構造物の設計法をより現実的なモデルと捉えられ, 大地震時の構造物の損傷を正確に把握することが可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書では, H形鋼梁に床スラブや屋根折板等を連続補剛材と想定した場合について, 等曲げモーメントを受ける連続補剛H形鋼梁の横座屈性能を把握することを目的としていた。 上記の研究実績の通り, おおむね順調に研究が進展したと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究では一方向載荷(単調載荷)した場合の梁の補剛効果を検討してきたが, 部材が地震外力を受ける場合, 実際の架構に作用するのは正負交番の繰返し曲げ載荷である。また, 逆対称曲げモーメントを受ける梁の梁端から反曲点位置までの区間を対象に, 勾配曲げモーメントを受けるH形鋼梁の横座屈性能を把握した。そこで, 鉄骨架構を構成する梁では梁には逆対称曲げモーメントが生じる。そこで, 逆対称曲げモーメントを受けるH形鋼梁の横座屈性能は把握する。 また, 上記の内容は, 部材に対して一方向載荷(単調載荷)した場合の梁の補剛効果を検討してきたが, 部材が地震外力を受ける場合, 実際の架構に作用するのは正負交番の繰返し曲げ載荷である。繰返し荷重を受けるH形鋼梁の横座屈性状に関する研はあるが, 梁の細長比や載荷履歴などが繰返し載荷を受けるH形鋼梁の横座屈挙動に及ぼす影響について検討されているとは言い難く, 横座屈が支配的な梁の繰返し挙動や局部座屈発生後に連成して生じる横座屈による耐力劣化に関する研究は少ない。単調載荷した場合に対して繰返し載荷した場合, 座屈後の耐力低下が急激になる。梁の横座屈時においても繰返し載荷時の耐力低下率や塑性変形性能に対する補剛材の取り付け位置, 補剛性能を明らかにする。 次に, 主梁と非構造部材の接合箇所での施工性及び材端支持条件を考慮した部分架構を製作し, 載荷実験を行い, 非構造部材を取り付けた主梁の座屈性状及び補剛材に作用する応力分布や塑性化の進展状況を明らかにし、理論解析で求めた補剛剛性及び主梁の座屈耐力の有効性を検証する。
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