2014 Fiscal Year Annual Research Report
ラグランジュ平均曲率流における安定性と収束性の関係
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13J06407
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 光 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | リッチ流 / 平均曲率流 / 自己相似解 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般に、カラビヤウ多様体の中でグレイデッドなラグランジュ部分多様体を初期状態とするラグランジュ平均曲率流はI型特異点を形成しないということが知られている。この事実を証明するためのキーポイントはHuisken氏が証明したユークリッド空間内で平均曲率流がI型特異点を形成するならばそのリスケーリングは自己相似解に収束するという事実である。申請者はこのHuiskenの仕事をユークリッド空間から、より一般のリーマン多様体に対して拡張する研究を行った。Huiskenの平均曲率流に関する結果の重要な道具はある重み付体積の平均曲率流に沿っての単調性公式である。従って、まずユークリッド空間内の平均曲率流に対する単調性公式と同様の単調性公式が存在するよう外部空間は何であるかを考えた。その結果として、外部空間は勾配縮小ソリトンならばその中を動く平均曲率流に対する単調性公式があるということに気が付いた。ただし、厳密には平均曲率流ではなくリッチ平均曲率流というリッチ流と平均曲率流を混合した方程式を考えなければならない。その他のいくつかのHuisken氏の仕事も勾配縮小ソリトン内に拡張することで、結果として、勾配縮小ソリトン内を動くリッチ平均曲率流がI型特異点を形成するならば、そのリスケーリングは勾配縮小ソリトン内の自己相似解に収束するということを証明した。これはHuiskenの上述の結果の拡張になっている。この結果と、最近発表されたLotay氏とPacini氏によるケーラー多様体内ではラグランジュ部分多様体を初期状態とするリッチ平均曲率流はラグランジュ部分多様体であり続けるという結果を合わせると、もし勾配縮小ケーラーリッチソリトン内のラグランジュ部分多様体を初期状態とするリッチ平均曲率流がI型特異点を形成したとすると、そのリスケーリングは勾配縮小ケーラーリッチソリトン内のラグランジュ自己相似解になる収束するということが分かる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Huisken氏のユークリッド空間での結果が実際はユークリッド空間が縮小勾配ソリトンであるという事実だけから証明できるということが分かった点でおおむね順調に進展しているといえる。またリッチ流と平均曲率流を混合するというアイデアに触れたことで、今までのカラビヤウ多様体の中で示されていたことが、カラビヤウ多様体でなくてもリッチ平均曲率流を考えればうまくいく場合があるのではないかといった新しい研究の方向性が生まれた。
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Strategy for Future Research Activity |
ラグランジュ平均曲率流とフレアーホモロジーの関係性について研究したい。例えば初期ラグランジュ部分多様体がフレアーホモロジーの意味で非障害ならば悪い特異点は起きえないといったタイプの結果が得られるとよい。しかし、現状ではフレアーホモロジー自体が非常に難しい理論でそれを平均曲率流の研究の中に取り込むのは非常に難しいと思われる。もし、フレアーホモロジーを研究に導入することが困難な場合は、ケーラー多様体の中でラグランジュ部分多様体を初期状態とするリッチ平均曲率流の研究を行う。
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