2013 Fiscal Year Annual Research Report
多様な銀河環境における分子雲及び星団形成過程の多相星間媒質論に基づく理論的解明
Project/Area Number |
13J06423
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岩崎 一成 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 星間媒質 / 星形成 / 数値計算法 |
Research Abstract |
今年度は、主に3つのテーマについて研行った。一つ目は、数値計算手法の改良である。我々が開発したSmoothed Particle Magnetohydrodynamics (SPM)法に対して、磁場の発散がゼロという条件を数値的に維持できるように、有限体積法で広く用いられているhyperbolic divergence cleaning法を実装した。この結果は、査読付き会議録として出版された。さらに、磁場が強い場合にSPM法の精度が著しく低下することを発見した。星形成過程は強い磁場中で起こるので、深刻な問題点となり得る。我々は、線形解析を用いて、この問題の原因を用いて明らかにし、その解決法を提案した。この結果については、現在論文作成中である。SPM法を用いて、星形成時に放出されるoutflowの計算を行い、その解像度依存性について指摘した。この結果は、天文学会秋季年会で口頭発表、Protostar & Planet VIでポスター発表した。 二つ目は、多相星間媒質における乱流駆動機構の解明を行った。多相星間媒質中の乱流は、単相の乱流とは異なり、温かい相と冷たい相の間の相転移が重要となる。この相転移は、正に冷たい相である分子雲形成過程に関連する。我々は、周期境界条件の下で、多相星間媒質中の乱流が自己維持されるメカニズムを発見した。相転移に伴う温かい相から冷たい相への運動エネルギーの輸送が乱流駆動に重要な役割を果たしている事がわかった。これは星間媒質中の乱流構造の理解の一端となると期待される。この結果は、10月にドイツのGarchingで行われた国際会議で口頭発表し、The Astrophysical Journalに学術論文として掲載された。 三つ目は、分子雲圧縮によって形成される圧縮層の分裂過程を、開発したSPM法を用いて調べた。従来は、圧縮層の自己重力的分裂によって形成されるフィラメントは十分質量が大きく、非常に細くなるまで動径方向に収縮してから分裂すると考えられていた。我々は、数値流体シミュレーションによって、細くなる前にフィラメントが分裂することを明らかにした。この結果は、天文学会春季年会で口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は、多相星間媒質を考慮にいれた星形成過程の研究を行う予定であったが、多相星間媒質である星間ガス自体における興味深い乱流駆動メカニズムを発見したため、先に、その詳細な物理過程を解明した。また、予想外に、数値計算法に問題が生じたため、その原因究明を行い、解決法を提示した。その改良されたコードを用いて、星間ガス圧縮層における星形成過程は磁場を考慮に入れて研究を進め、天文学会で発表済みであるため、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
星間ガスの乱流駆動に関する研究を先に行ったため、星間ガス圧縮層での星形成過程は、温度が一定であるという簡単な近似を用いて行っている。今後、等温の場合を詳細に解析する。さらに熱的過程を考慮にいれ、星間ガスの多相性を考慮に入れて、星形成過程の研究を遂行していく予定である。
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Research Products
(11 results)