2013 Fiscal Year Annual Research Report
エピジェネティクス制御による転移性癌の新規治療法開発
Project/Area Number |
13J06428
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
土橋 賢司 九州大学, 医学研究院, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | CD44 / スプライシング / 転移 |
Research Abstract |
[研究の目的] CD44mRNAはESRP1によって選択的スプライシングを受ける。CD44バリアントアイソフォーム(CD44v)の発現は、高い酸化ストレス抵抗性、転移能に関与することが知られている。エピジェネティックに制御されているESRP1の制御機構を明らかにすることで、転移性癌の治療開発を目指す。 [研究実施計画] マウス転移性乳がん細胞株4T1は、CD44vとCD44スタンダードフォーム(CD44s)より構成される。スクリーニングによってアイソフォームの変化をもたらす薬剤・因子を明らかにする。その作用機序を明らかにすることでESRP1の制御機構を明らかにする。 [研究の成果] スクリーニングの結果、MEK阻害剤、c-myc阻害剤、トリコスタチン、MTAがCD44vの発現を上昇させることが明らかになった。また、FGFR阻害剤、TGFβ阻害剤に関しては、元来の4T1のCD44のスプライシングパターンとは異なり、比較的長いバリアントアイソフォームである、v7-10、v6-10が上昇することが、半定量的PCRで明らかになった。更にその変化は、両者を併用することで増強される結果を得た。ただし、CD44vの発現を減少させる薬剤は明らかにできなかった。4T1はマウスの乳がん細胞であるが、これらの変化がヒトで生じるかどうかを、ヒト乳癌細胞株を用いて解析した。その結果、一部の細胞株でトリコスタチンにてCD44vの発現上昇を認めたものの、多くの細胞株ではマウスと同様の変化を認めなかった。 以上より、スクリーニングにより、CD44アイソフォームステータスに変化を起こす薬剤を明らかにできたが、マウスとヒトがん細胞では、異なる機構によりCD44アイソフォームステータスが制御されていることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スクリーニングにより薬剤を同定でき、ヒトの癌細胞株での解析を行うことに到達できた。しかし、マウスとヒトでは目的とする分子発現の制御機構が異なることが明らかになり、今後の計画をヒト癌細胞株を用いたものに変更することとした。当初は本年度中にin vivoの解析までを予定していており、計画よりやや遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度の結果を受けて、マウスの癌細胞からヒト癌細胞株にスクリーニング系を変更することにした。既に、様々なヒト癌細胞株の解析を行い、マウス癌細胞株である4T1のように、CD44v陽性と陰性細胞より構成される細胞株を明らかにした。また、ESRP1に対するshRNAを導入することで、CD44vからCD44sへ変化し、ESRP1によってCD44アイソフォームステータスが制御されていることを確認した。更に、初年度のスクリーニングで明らかにした薬剤をこの細胞株に使用した結果、CD44vステータスに変化を与えるものがあることを確認している。 今後は、この細胞株を用いて、CD44vステータス、ESRP1の発現に影響を与える、特にCD44vからCD44sへの変化を起こす薬剤を同定することを目指す。同定した薬剤がESRP1の発現に影響を与えることを確認した後、薬剤の作用を詳細に明らかにすることで、ESRP1のエピジェネティックなステータスの制御機構を明らかにする。最終的に、明らかにした制御機構に対する特異的な薬剤を絞り、癌の悪性度を抑制できるかをin vivoで評価し、治療へつなげることを目指す。
|