2013 Fiscal Year Annual Research Report
特性ばらつきの自律補償技術とそれを活用したLSIの低消費電力化手法に関する研究
Project/Area Number |
13J06432
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
イスラム マーフズル 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | LSI / MOSFET / ばらつき / モニタ回路 / DVFS / 自律補償 / Self-healing / Circuit Design |
Research Abstract |
本研究の目的は、LSIの特性ばらつきをオンチップで診断し、自律的にそのばらつきを補償する技術を確立することである。そして、オンチップモニタによる特性調整技術を活用したLSIの低消費電力化手法を提案することである。 当該年度は、幅広い電源電圧で動作する回路におけるトランジスタの平均的な特性ばらつきを自律的に補償する回路技術を提案した。回路の消費エネルギーを減らすために、性能要求に応じて電源電圧及び動作周波数を変える方法が最も効果的である。しかし、低電源電圧動作においてチップ内のトランジスタごとに発生するランダムばらつきの影響が急拡大し、回路の誤動作の原因となる。そこで、ランダムばらつきの量をオンチップで診断する必要があり、今年度は単一の回路を用いて平均的なばらつきとともにランダムなばらつき量をモニタする回路技術を提案し、重要な研究成果を上げた。従来大量の回路特性からしか診断できなかったものが、単一の回路よりばらつきの様々な成分を診断できるようになった。研究成果をデバイスに特化した国際会議(SSDM)、回路技術に特化した国際会議(ASSCC)及び評価 : 技術に特化した国際会議(ICMTS)に研究成果を発表した。様々な用途に応用できる提案遅延モニタセルは動作中に構成が可変となっており、特性ばらつき診断の新たな方向性を示した。提案回路は高く評価され、ASSCCの発表論文が回路系トップの論文誌であるJSSCの特集号に招待された。デバイスの特性評価の新たな方法を提案した論文はすでに学術論文誌に掲載されている。提案のモニタセル及び特性ばらつきの診断技術はよりエネルギー効率な回路設計を可能とする。提案回路技術は特許出願中である。そして、幅広い電源電圧で動作する回路の設計手法に関して検討を行い、設計条件及び補償技術の影響を評価できるテスト回路を試作した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
LSI特性ばらつきのオンチップ診断技術に関して重要な成果を上げた。単一の回路を用いて特性ばらつきの様々な成分を診断するという画期的な発明ができ、複数の学会にて成果を発表した。提案回路技術を特許出願中であり、学術論文誌にすでに掲載されている。次に、回路の性能を製造後に補償する技術を幅広い電源電圧動作に対応させ自律補償技術を結合した暗号化・複合化回路を複数の設計条件の元で試作した。今後は、特性補償技術及び回路設計技術の影響を検討し、LSIの設計技術に自律補償技術を結合させる技術を確立する。
|
Strategy for Future Research Activity |
LSIの性能向上及びエネルギー効率を向上させるために、様々なモニタ回路が必要である。来年度は従来のばら診断回路に加えてリークモニタ回路、温度センサなどの検討を続ける予定である。これらのモニタ回路設計において、低設計コスト、小面積及び評価の容易さなどが検討課題となる。既存のセンシング技術に比べて、柔軟性のある技術を提案し、小規模の回路から大規模の回路までチップ内で細粒度で各種パラメータをモニタする技術を提案することを目標とする。そして、低電源電圧動作及び幅広い電源電圧で動作する回路設計の手法をオンチップ診断回路及び性能調整技術と合わせて提案する。提案内容を理論、シミュレーション及び実測の観点から評価とフィードバックを行い、技術の確立と今後の可能性について考察を行う。
|