2014 Fiscal Year Annual Research Report
飼料用籾米給与における暑熱ストレス亢進メカニズムの統合的解明とその制御
Project/Area Number |
13J06451
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
南都 文香 東北大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 飼料用米 / 暑熱ストレス / 肉用鶏 / 酸化ストレス / 炎症応答 / 腸管形態 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国は飼料穀物の大半を輸入に依存しており、持続的供給は担保されていない。特に、家畜飼料の主体となるトウモロコシは、飼料用としてのみならず、バイオエタノール原料としての需要も拡大し、国際的需給がひっ迫している。そのため、輸入トウモロコシに替わる、国産飼料穀物として、飼料用米の畜産への活用が期待されている。近年、家禽生産における飼料用米給与の有効性は徐々に明らかとなっているが、ストレス環境下でも利用可能であるかの検証は十分ではない。採用者はこれまで、生産現場における代表的ストレス要因である〝暑熱環境″に着目し、慢性暑熱環境下における肉用鶏への飼料用籾米給与は、トウモロコシ給与と比べ、腸管の形態損傷を亢進することを明らかにし、これが成長低下要因となる可能性を示した。したがって、本研究は、籾米の実用化を確固たるものにするため、最適ストレス制御手法の確立を最終目標としている。効率的かつ適切なストレス制御を行うため、平成25年度は、暑熱時の籾米給与による負の作用点を統合的に検証し、成長低下機序を明らかにした。すなわち、暑熱時の籾米給与による成長低下は、腸管の形態損傷・機能低下が、腸内細菌由来内毒素の体内への流入を誘導し、内毒素が全身性の炎症応答ならびに酸化ストレスを亢進することで引き起こされることを示した。加えて、腸管組織においては異常な免疫応答が起きていることも明らかとし、暑熱時の籾米給与による成長低下は腸管の機能障害が一つの引き金となることを示した。そこで平成26年度は、最適ストレス制御手法の確立を目的に、腸管をターゲットとした2つの制御方法(試験1:籾米の粉砕・脱俘処理による制御、試験2:機能性資材トレハロース添加による制御)を検証し、有効なストレス制御を実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、慢性暑熱時の籾米飼料給与鶏に対する有効なストレス制御を実証した。すなわち、昨年度明らかにした、暑熱時の籾米給与による成長低下機序より「腸管の機能障害」が成長低下の重要要因の1つであると仮定し、腸管をターゲットとした2つの制御方法(①籾米の粉砕・脱俘処理による制御、②機能性資材添加による制御)の検証により、有効ストレス緩和方法を実証した。すなわち、慢性暑熱環境下において、全粒籾米飼料(ME:3.1 kcal/g, 油脂11%)給与時には、トウモロコシ飼料(ME:3.1 kcal/g, 油脂5%)給与と比べ、成長低下ならびに酸化ストレスが増大した。このような暑熱感作時における全粒籾米給与によるマイナス効果は、予想に反して籾米の粉砕処理によりさらに大きくなったが、籾米の脱桴処理米、すなわち玄米の給与でその効果は抑制された。一方、全粒籾米飼料へのトレハロース添加により暑熱時の全粒籾米飼料給与によるマイナスの効果が緩和される可能性が示された。以上のことより、暑熱環境下における飼料用米給与時には、脱桴処理した玄米の形状で給与する、あるいは機能性資材トレハロースを添加する、いずれかを実施することで効果的にストレスを緩和し、トウモロコシ飼料と遜色ない生産性が見込めることが明示された。したがって、当初の計画通り、籾米給与鶏の暑熱に対する生体応答から制御点を絞り、効率的にストレス制御方法を確立したことから、上記の自己評価に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、腸内細菌叢と宿主の免疫応答に着目した新たな制御実験の実施により、さらなる有効制御方法の確立、最適化を試みる。また、最終年度として、成果を総合的にまとめ上げる準備も行う。
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Research Products
(8 results)