2013 Fiscal Year Annual Research Report
相互作用するフェルミ粒子系におけるトポロジカル不変量を用いた分類とその応用
Project/Area Number |
13J06466
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小林 伸吾 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 奇パリティ超伝導 / ノード構造 / トポロジカル安定性 / スピン軌道相互作用 / ゼロエネルギー状態 |
Research Abstract |
本研究課題ではトポロジーの概念を用いて固体電子の普遍的な性質を理解し、固体物質に内在する新奇量子現象を解明することを目的としている。今年度の研究で私は奇パリティ超伝導体のノード構造とトポロジカル不変量との関係性に焦点を当て研究を行った。ここで、ノード構造とはフェルミ面上で超伝導ギャップ関数がゼロになる場所のことである。私は特に1985年にBlount氏により証明された「線状のノードは奇パリティ超伝導体では存在しない」という定理に着目した。なぜならば、Blountの定理があるにも関わらず、奇パリティ超伝導体の候補であるUPt_<3>の実験では線ノードの存在が確認されている。この数学的定理と実験事実との間に矛盾が存在する理由の一つは、物質中でスピン軌道相互作用(SOC)が当初考えられていたよりも小さく、Blountの定理はSOGが大きい領域でしか成り立たないという事実に起因する。 我々は、この問題に対してトポロジーの概念を用いればこの問題を解決できることを発見した。なぜならば、トポロジカルな安定性はSOCが小さい領域においても成り立つからである。我々はトポロジカル不変量を計算することで以下の結果を得た。(1)奇パリティ超伝導体においては時間反転対称性があっても無くても線ノードは不安定である。(2)物質固有の対称性が存在すれば線ノードを安定にすることができる。ここで(1)がトポロジカル版のBlountの定理を表し、(2)がオリジナルの定理の反例を示す。よってSOCが小さければ線ノードが許されることを厳密に示すことに成功した。さらには線ノードがトポロジカルに安定であると物質表面にゼロエネルギーの状態が誘発されることが偶パリティ超伝導体や空間反転対称性が破れた超伝導体で指摘されていたが、奇パリティ超伝導体の場合はラッシュバSOCにより表面状態が不安定になることを初めて指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目的としていた固体電子系におけるトポロジーを理解し、実際の物理系へ応用するところまでやり遂げることができた。さらには実験家への提案なども行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究ではトポロジーを用いてノードの一般的な安定性について議論した。次年度では、ノードにより引き起こされる物理現象に焦点を当て研究を行いたいと考えている。例えば、並進対称性を持つ物質においてノードが存在するとカイラルアノマリーという量子異常が出現することが知られている。またこれに起因して電気磁気効果と呼ばれる磁場と電場を交換する効果が物質中に発生する。私は一般の結晶群とアノマリーとの関係性について研究を行い結晶群からアノマリーの有無を判別する手法の構築を目指したいと考えている。
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Research Products
(7 results)