2015 Fiscal Year Annual Research Report
フェムト秒パルスラジオリシスによる極性溶媒中の電子の熱化及び溶媒和過程の研究
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13J06490
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
樋川 智洋 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | パルスラジオリシス / アルコール / 溶媒和電子 / 溶媒和前電子 / ドライ電子 / フェムト秒 |
Outline of Annual Research Achievements |
採用最終年度となる平成27年度は、これまでの研究の取りまとめを中心に、アルコール中の電子の熱化・溶媒和過程の研究を行った。具体的に実施したことは以下のとおりである。 ①フェムト秒パルスラジオリシス法で得られた過渡吸収の解析手法を確立した。パルスラジオリシスシステムの時間分解能を決定する要因である、電子線およびレーザーのパルス幅、電子線とレーザーの同期ジッターおよびサンプル通過中の電子線とレーザーの速度差に起因する応答関数を組み込んだ理論曲線を用いて、実験的に得られる過渡吸収の時間変化を解析することで、フェムト秒やピコ秒で進行する現象を議論できることを証明した。 ②メタノール、エタノール、ブタノール、オクタノール中の溶媒和前電子の生成および減衰時間を決定した。それぞれの得られた時間については、誘電緩和時間と比較し、溶媒和前電子の生成はOH基のフリッピング運動と、溶媒和前電子の減衰は1つの溶媒分子の回転配向と関係していることを明らかにした。 ③前年度までに行ったニトロメタン、四塩化炭素に加え、6種の電子捕捉剤を用いて電子捕捉実験を行い、ドライ電子、溶媒和前電子および溶媒和電子の反応性を詳細に検討した。 ④本研究の総括として、溶媒和電子生成モデルを構築した。放射線で生成する電子は、熱化によって、ドライ電子となる。ドライ電子は水素結合ネットワーク末端のOH基に束縛されることで溶媒和前電子へと変化する。その後、溶媒和前電子から溶媒和電子に至る過程では周囲の溶媒和電子を1つ、水素結合を切断し、自身に配向させることで溶媒和電子へと至る。一方、溶媒和前電子から溶媒和電子へと変化する過程では同時に、周囲の溶媒分子が回転配向していくことで過渡吸収スペクトルが短波長側へシフトする。以上のプロセスによって溶媒和電子が生成することを示した。
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Research Progress Status |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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