2013 Fiscal Year Annual Research Report
新たな生物考古学的手法による遺跡出土動物遺存体の生活史復元 文理融合解釈への試み
Project/Area Number |
13J06545
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
覚張 隆史 北里大学, 医学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 同位体分析 / ハイドロキシアパタイト / 動物遺存体 / 雑穀利用 / 古代DNA分析 / 次世代シーケンサー / 毛色遺伝子 / DMRT3 |
Research Abstract |
本研究は、遺跡出土動物遺存体を用いた動物の生態復元法の構築を試みるために、安定同位体分析と古代DNA分析における新たな動物考古学的研究を展開している。従来の両分析は、歴史学や考古学の研究領域への貢献が比較的に少なく、動物考古学で提示された仮説を検証するには、方法論的な限界があった。そこで、本研究は遺跡出土動物遺存体から、食に関する情報と骨形態以外の毛色および歩法に関する情報を抽出する技術の構築をすすめた。 東アジアにおいて、家畜は中国を起源として雑穀類を与えられてきた。そのため、雑穀類の給餌割合を推定することで、各地域における馬の食生態の復元だけでなく、大陸を含めた動物の飼育形態の文化圏を評価することにつながる。また、東アジアを中心として、律令体制が普及するが、律令の内容には馬への雑穀給餌量が明記されており、3歳以降に雑穀類の給餌が本格化する。そこで、本年度は、現生馬を用いて雑穀利用率の異なる馬集団の歯エナメル質の炭素同位体比を測定し、実際に歯エナメル質の炭素同位体比が雑穀摂取量と対応可能か検証した。その結果、炭素同位体比は、雑穀摂取量に応じて変動し、雑穀摂取量と正の相関を示した。今後、雑穀摂取量(Whole Diet)の推定式を作成し、遺跡出土馬への応用可能性を検証する予定である。 また、古代DNA分析では、従来の分子系統学的な議論ではなく、育種選抜に関連する形態復元法の確立を試みた。近年の分子生物学において利用が盛んな次世代シーケンサー(NGS)およびターゲット・エンリッチメント法(Targeted-enrichment)を用いて、全ミトコンドリアDNA配列を効率的に抽出することに成功した。今後、これらの技術を、毛色関連遺伝子および候補因子である11座位と、歩法関連遺伝子であるDMRT3のジェノタイピング法の確立を試みる予定である。これらの分析手法が確立した後に、実際に遺跡出土馬への応用を実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究目的は遺跡出土馬を用いた新たな生態復元法の開発である。この目的を達成するために、第一に現生動物に基づいて方法論的な有用性の検証を実施した。安定同位体分析と次世代シーケンサーを用いた実験系を構築し、実際に考古資料に応用することが可能となった。次年度からは、遺跡出土馬の分析に取り掛かれる下地が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
安定同位体分析の方法論的な妥当性は検証できたが、古代DNA分析は未だ確実に考古資料に応用可能であるわけではない。なぜなら、遺跡出土動物骨に含まれるDNAのほぼすべてが土壌中のバクテリア由来であるため、ターゲットとなる動物のDNAを抽出するには非効率的であるのが現状である。そこで、ターゲットとなる動物由来のDNAを選択的に抽出する手法であるターゲット・エンリッチメント法の実験系の確立と、抽出効率の向上を試みる。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] First molecular data on Bornean banteng Bos javanicus lowi (Cetartiod actyla, Bovidae) from Sabah, Malaysian Borneo2014
Author(s)
H. Matsubayashi, K. Hanzawa, T. Kono, T. Ishige, T. Gakuhari, P. Lagan, I. Sunjoto, J. Rafiah A. Sukor, W. Sinun, A. H. Ahmad
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Journal Title
Peer Reviewed
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