2014 Fiscal Year Annual Research Report
新たな生物考古学的手法による遺跡出土動物遺存体の生活史復元 文理融合解釈への試み
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13J06545
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
覚張 隆史 北里大学, 医学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生物考古学 / 同位体地球化学 / 古代DNA分析 / 国際情報交換 / 中国 |
Outline of Annual Research Achievements |
①歯エナメル質炭酸塩の同位体比測定の確立とその応用 昨年度に構築した実験系を中国陝西省の少陵原西周墓地遺跡出土馬に適用し、約3000年前の西周王朝時における馬の食生態を復元した。その結果、遺跡出土馬はC4植物を多く摂取している個体と、ほとんど摂取していない個体が混在する状況であったことが示された。西周時代においては、栽培植物であるアワが代表的なC4植物であり、西周時代の人々は栽培植物であるアワなどの給餌量を個体によって変えていた可能性が示された。また、日本の古墳時代遺跡出土馬に同様の分析法を適用し、得られた結果に関する論文を学術誌へ投稿した。
②次世代シーケンサーを用いた古代DNA分析の確立 遺跡出土動物から、骨の形態学的な情報以外の生物の形質を復元することを目標に新たなDNA分析法を遺跡出土馬に適用する試みを実施した。家畜の育種選抜において重要な形質である毛色形質および歩行形質を復元するために、まず毛色決定関連遺伝子である主要9遺伝子のPCR増幅の実験系を構築することを試みた。分析試料は、毛色が既知である日本在来馬およびサラブレッドの全血由来DNAを供した。現在、配列決定のために分析を継続して実施している。 また、遺跡出土馬に本法を適用するために、新たなDNA分析手法である次世代シーケンサー分析(NGS法)を用いた実験系の構築も並行して試みた。約60bp~80bpのPCRアンプリコンからNEB社のNGSライブラリ作成キットを使用し、目的のインサート配列を得た。今年度に構築されたこの分析手法を遺跡出土馬から得られた毛色関連遺伝子のPCRアンプリコンに適用し、毛色遺伝子のジェノタイピングを実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、遺跡出土動物遺存体の同位体分析およびDNA分析に基づいた生態復元を目的としている。また、これらの研究で得られた成果を学術誌へ投稿し、社会還元するまでは本研究課題の最終目標である。 この観点に基づいて本研究課題の達成度を自己評価すると、同位体分析では既に2本の学術論文が投稿され、両方の論文はすでに受理されている。このため、同位体分析は当初の計画が達成され、文理融合型の研究が結実したと考えている。 また、DNA分析の実験系の構築に関する論文で、新たな実験系を用いた研究論文1本が投稿・受理されており、順調に進展している。 しかし、DNA分析は実験系の構築はほぼ完了したものの、遺跡出土試料に関する論文はまだ受理されていない。このため、最終年度では古代DNA分析の結果を論文受理までにしたいと考えている。 この様に、同位体分析およびDNA分析の両手法において、成果は確実に上がっており、最終年度で最後の論文をまとめることで、本研究課題が達成されると考え、「(2)おおむね順調に進展している。」の区分を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
NGSを用いた新たな古代DNA分析を実施するために、遺跡出土試料を用いたDNA抽出・NGSライブラリ化・Miseqによる解析を実施する予定である。また、遺跡出土馬のDNA抽出液から毛色関連遺伝子のPCRを実施し、既にPCRアンプリコンを得ているため、これらをNGSライブラリ化し、アンプリコンSeqを実施する予定である。得られた配列データをweb上の解析プログラムであるGallaxyで簡易解析し、国立遺伝学研究所のスーパーコンピューターを用いて最終的な解析を実施する予定である。解析結果を論文にまとめ、学術誌に投稿する予定である。
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Research Products
(8 results)