2013 Fiscal Year Annual Research Report
多感覚統合における調整機能とその可塑性の役割-運動感覚との統合による知覚の変容-
Project/Area Number |
13J06554
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山本 浩輔 慶應義塾大学, 社会学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 多感覚情報処理 / 視聴覚統合 / 時間的再較正 / 主観的同時性 |
Research Abstract |
本年度は, 本研究課題の中心となる時間的再較正現象について, 感覚情報および知覚認知処理過程の階層的モデルという観点から, その生起メカニズムを明らかにするための研究を実施した。時間的再較正は感覚刺激間の時差への順応により感覚間の主観的同時性が変化する現象であるが, これまでの研究では, 複数刺激の呈示タイミングが時間的に近接しているほど多感覚統合による知覚現象が生起しやすいことから, 時間的再較正は外的環境の変化に合わせて効率的な統合処理を実現するために起こると考えられてきた。この仮定に基づけば時間的再較正において変化する感覚間の主観的同時性が得られる刺激呈示タイミングと多感覚統合が最も生起する呈示タイミングは一致するはずであるが, これについての実証的検討による研究は今まで行われていなかった。そこで本年度の研究では, これまでの時間的再較正に関する研究で多く検討されてきた視聴覚モダリティについて, 時間的再較正をもたらす感覚間の時差順応手続きを用い, 視聴覚間の主観的同時性および感覚統合処理に特有の知覚生起率を測定することで, 時間的再較正において変化する感覚間の主観的同時性が, 感覚情報どうしの統合処理過程を反映しているものなのか, それともより高次認知的な主観的判断過程を反映しているものなのかについて, 心理実験による検討を行った。本研究の結果, 視聴覚統合と主観的判断にとっての刺激間時間情報の処理特性分布は異なるものであることが明らかになり, 時間的再較正の多感覚統合処理への貢献という考察に対して疑問を投げかけ, 時間的再較正の生起メカニズムについての新たな情報処理モデルを示唆する結果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の目的は運動感覚を含めた階層的かっ包括的な多感覚情報処理過程を明らかにすることであるが, 本年度の研究では多感覚情報の階層的処理モデルについての示唆が得られる成果が得られた一方で, 扱うことが出来た感覚モダリティは視聴覚モダリティに留まり, 運動感覚を含めた実験的検討を行うことは出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
時間情報の処理過程については, 運動感覚と視覚および聴覚間の時間的再較正についての実験を行い, 各感覚モダリティにおいて時間的再較正に貢献する感覚情報について検討することで, 感覚モダリティを包括して作用する情報処理過程を明らかにする。加えて, 各感覚モダリティにおける色や音高等のモダリティ特異的な感覚情報との結びつきについても実験を行うことで, 単一感覚処理から感覚統合処理へといった一連の包括的情報処理過程についても検討する。
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Research Products
(3 results)