2014 Fiscal Year Annual Research Report
多感覚統合における調整機能とその可塑性の役割-運動感覚との統合による知覚の変容-
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13J06554
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山本 浩輔 慶應義塾大学, 社会学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 多感覚情報処理 / 時間的再較正 / 主観的同時性 / 時間順序判断 / 同時性判断 / 感覚間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,多感覚情報処理における時間情報調整過程について,視聴覚間および運動-聴覚間における実験的検討を行い,感覚モダリティを包括した調整メカニズムを明らかにするための検討を行った。 視聴覚モダリティ間に関する検討では,感覚情報および知覚認知処理過程の階層的モデルという観点から,感覚間の主観的同時性の知覚が反映する時間情報処理と多感覚統合を生み出す時間情報処理が乖離したものであるとする仮定のもと,刺激間時差への順応手続きを用いた実験的検討を行った。その結果,視聴覚統合と主観的判断にとっての刺激間時間情報の処理特性分布は異なることが明らかになり,多感覚統合と時間的再較正の生起メカニズムについての新たな処理モデルを示唆することができた。 運動-聴覚間に関しては,発声事態における実験的検討を2つ実施した。1つ目の検討では,時差情報の調整処理が発話生成および発話知覚の両過程において働くかについて実験を行った。発話に対する話声の遅延フィードバックの継続的経験によって発話生成および発話知覚の両過程における時間的指標に変化が見られるかについて検討した結果,比較的大きな遅延の継続的経験によって両過程に順応効果が認められ,加えて両過程ともにより大きな遅延では順応効果が減衰することが明らかになった。2つ目の検討では,これまでに視聴覚間について検討されてきた時間的再較正における注意の影響が,発声-聴覚間においても見られるかについて実験を行った。発声-聴覚間時差順応中の感覚間同期性への注意が順応前後における同期性判断分布をどう変化させるかについて検証した結果,同期性への注意は順応前後の同期性判断分布を通常の時間的再較正とは反対方向へ変化させることが明らかになり,先行する視聴覚研究との比較から時間的判断における時間順序判断と同期性判断の乖離性を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的は運動を含めた階層的かつ包括的な多感覚情報処理過程を明らかにすることである。本年度の研究では運動-聴覚間に関してだけでなく視聴覚についても検討することができ,また両検討において一部共通の示唆を与えうる結果が得られた。また,両検討において多感覚間の時間情報のみならず刺激情報への注意過程や刺激の特徴情報の処理過程による時間情報調整過程への影響を検討することができた。これらのことから,本研究課題の目的達成に向けておおむね順調な研究遂行がなされていると考えられる。今後は各感覚モダリティに共通したメカニズムに加えて,特に運動とその他の感覚を比較することでモダリティ特異的な情報処理の関与について検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題において目的とする,運動および視聴覚モダリティを包括した感覚情報処理の統合および調整機能のメカニズムの解明の為には,これらの感覚モダリティ間において共通して確認されている現象からその背後にある共通の情報処理過程を明らかにする必要がある。したがって来年度の研究課題としては,感覚運動間および視聴覚間における時間情報とモダリティ依存的・特異的な感覚情報の調整過程についての検討を進める。加えて,感覚モダリティを包括した時間情報調整および多感覚統合のモデルに関する検討を行う。 一方で,年次計画の3年目の課題として挙げた神経メカニズムの解明に関しては,モデルに関する検討を優先すべき研究課題と考え,実施課題としての優先順位を下げる必要がある。
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Research Products
(6 results)