2013 Fiscal Year Annual Research Report
歴史教育を通した国民国家像の形成-モンゴルにおける中学校歴史教科書を事例に-
Project/Area Number |
13J06572
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
高橋 梢 東京外国語大学, 大学院地域文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | モンゴル / 教科書制度 / 歴史教科書 / 歴史教育 / 民主化 / ライフヒストリー |
Research Abstract |
本研究は、普通教育学校の歴史教科書分析および教育関係者への聞き取り分析を軸に、現代モンゴルにおける歴史教育を通した国民国家像の形成の変遷を読み解こうとするものである。 本年度は、学校教育において不可欠の教科書に関する制度政策および実態の解明、1980年代から1990年代の民主化移行期における歴史教育政策の精査、歴史・社会科教師として民主化を経験した人物への聞き取り調査と分析に従事した。これまでの蓄積された調査データをもとに、7月5-7日に開催された日本比較教育学会第49回大会において「モンゴルにおける教科書制度に関する現状と課題―教科書と子ども・教員をとりまく環境に焦点をあてて―」として口頭発表し、現地調査において確認された点を照合し、論文「モンゴルにおける普通教育学校の教科書供給の現状と課題―ウランバートル市の実態調査から―」(『言語・地域文化研究』第20号、2014年1月)を発表した。 8月から9月にかけて約4週間、12月に約3週間、3月に10日間の現地調査を実施した。1度目の調査は、普通教育学校の視察および教務主任への聞き取り、教科書の収集を行った。またモンゴル国立中央公文書館、モンゴル国立中央図書館、教育研究所において資料収集した。2度目の調査は、1980年代の歴史教育政策の解明のため、モンゴル国立中央公文書館において資料を収集した。また、ライフヒストリー研究として、社会主義時代に歴史・社会科教師となり民主化を経験したベテラン教師への聞き取り調査を行った。3度目の調査は、モンゴル人民革命党公文書館所蔵の資料を収集し、教師への聞き取りの継続調査を行った。これらの調査により、1990年の民主化直前直後における歴史教育政策と教育現場の実態の両面を具体的に分析することが可能になった。特に当事者の証言は、歴史教科書が発行されなかった1990年代前半の歴史教育の実態解明において重要なてがかりとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3度の現地調査を行うことができ、計画に即して一次資料の収集と調査対象者の証言を得ることができた。その過程で、次に調査すべき対象者等の絞り込みができた。現地の各機関の利用可能期間の変更等に左右され、予想以上に資料収集に時間を要することもあったが、研究自体はおおむね順調に進んだといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、先行研究の渉猟とともに、これまでに収集した資料、証言の分析作業を進め、論文にまとめ研究成果の発表を積極的に行う。具体的には、1986年以降、段階的に発表されたモンゴル人民革命党中央委員会、政府による決議がその後の歴史教育政策、特に歴史教科書の記述内容におよぼした影響について言及したい。また、昨年度に引き続き現地調査を重視した研究を進めていく。現地調査では、一次資料の発掘と教師のライフヒストリー研究を継続して行う。あらたな聞き取り調査の対象として歴史教科書執筆者を予定しており、当時の歴史教科書作成に関する貴重な証言が得られると期待される。
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Research Products
(2 results)