2013 Fiscal Year Annual Research Report
18~19世紀パリにおける小売業の展開と服飾関連業
Project/Area Number |
13J06577
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
角田 奈歩 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 小売業 / ファッション産業 / パリ / 都市史 / 百貨店 / オート・クチュール / 既製服 / データベース |
Research Abstract |
(1)研究活動 : 2013年6~7月に渡欧, パリ市内の文書館で史料収集をした。またこの際にフランス, スイス, イタリア, 10月に京都でガラス屋根付き商業施設のフィールド・ワークを行った。11月には国際会議「グローバルな消費・再流通・再受容の歴史」で口頭発表を行い, 内外の諸分野研究者と交流した。また年明けから経済史研究者らと勉強会を開いている。 (2)成果 : 商業年鑑データ完成を初年度に予定していたが, 達成できなかった。「18世紀末から19世紀の服飾品関係小売業の経営方法などの実態を明らかにし, 小売業の歴史全体にそれを位置付ける」という目的をより確実に達成するため, 計画にはなかった課題を設定したためである(詳細は(3))。同じく計画していた19世紀初頭の服飾関係業者ルロワの帳簿分析は論文にまとめた。データ共有については口頭発表で意義と案を示した。データ共有実現については海外研究機関と連携する計画を検討中であり, 個人公開はさしあたり控える。ただし, 一部の生地関連データは織物産業を扱う研究者らと共有することとした。 成果公表については, 上述国際会議の口頭発表の他, 次年度中に出版予定のものが複数ある。 (3)内容 : ルロワについては, 前世紀のモード商との流通段階に占める位置の違いを示し, 後のオート・クチュールとの直接的・質的な繋がりを明らかにした。また, 計画にはなかったが, 新たに古着を考察対象と設定したことで, 注文服と古着しか衣服の選択肢がなく, 社会層に応じたファッションのタイムラグが生じていたが, 19世紀初頭に初の都市内産業として既製服製造業が始まり, このラグを埋めたことを理解した。このように注文服・古着・既製服の3軸から捉えると, 新品既製服が流入し始めた現在の途上国や既製服製造が工業化された20世紀の状況と共通点もあり, 他の時代・地域での既製服導入後の状況も踏まえて当時のパリの衣服製造・流通状況を捉える必要性を認識した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
商業年鑑データ化は大幅に遅れているが, 計画にはなかった新しい課題に取り組んでいること, またより地域的・時代的に広い視野から研究課題を捉えるための具体的な計画を得たことなど, 一部の遅れを補うに足る成果があったため, このように評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に即して遅れている商業年鑑データ化を進め, ヨーロッパ各地でのフィールド・ワークを行って19世紀初頭パリの商業的トポグラフィの分析とヨーロッパ他都市との比較に取り組む。また, 注文服・古着・既製服の3軸から18世紀末~19世紀初頭パリの衣服生産・流通構造を捉え, 都市内産業としての既製服製造業の始まりについて分析する。さらに, 特に当時のパリの小売と服飾関連業を巡る状況が, より広く世界史的な動きの中にどう位置付けられるかも検討する。
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Research Products
(4 results)
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[Book] ファッションビジネスのための文化論2014
Author(s)
内村理奈(編), 内村理奈, 朝倉三枝, 阿佐美淑子, 沢尾絵, 田中淑江, 富川淳子, 角田奈歩, 新實五穂, 横井由利(著)
Total Pages
176 (116-131)
Publisher
北樹出版
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