2013 Fiscal Year Annual Research Report
ホスファターゼ側から見たCaMキナーゼカスケードの新しい制御メカニズム
Project/Area Number |
13J06613
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
馬場 裕美 愛媛大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | プロテインホスファターゼ / CaMKP / プロテインキナーゼ / CaMK / リン酸化 |
Research Abstract |
CaMキナーゼはCa^<2+>/カルモジュリンによって活性化されるプロテインキナーゼの総称である。このうちCaMKI, II, IVは多機能性CaMキナーゼ(CaMKs)として知られ、神経伝達物質の合成や分泌、転写制御などを介して、記憶をはじめとする高次神経機能の制御に重要な役割を担っている。CaMKsはいずれもリン酸化により活性型に変換(スイッチオン)されることが知られているが、一方でスイッチオフに相当する脱リン酸化の機構については不明な点が多い。これまでの研究で、CaMKsには特異的な負の制御因子としてCaMKホスファターゼ(CaMKP)が存在することを見出しているが、その活性調節機構は明らかではない。本研究では、酸化還元によるCaMKPの活性制御機構に重点を置いて研究を進め、CaMKPが属するPPMファミリーのホスファターゼについても酸化還元によって活性制御を受けるかどうか解析を行っている。その結果、CaMKPは可逆的な酸化修飾を受けることが明らかとなった。さらに、CaMKPは分子内に存在するCys359を介して分子内ジスルフィド結合を形成することによって不活性化することが判明した。CaMKPはPPMファミリーに属するホスファターゼである。そこで、CaMKPを含めPPMファミリー酵素の酸化還元による活性制御について解析を行ったところ、CaMKP以外のPPMファミリーも酸化還元によって活性制御を受ける可能性が示された。CaMKPのみでなく、PPMファミリーのホスファターゼにおいても酸化・還元によって活性制御を受けることが明らかとなり、PPMファミリーがレドックスセンサー分子として働く可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の達成目標として定めていた、ヒトCaMKP分子の酸化されるアミノ酸残基(Cys359)を同定することができた。さらに、そのアミノ酸残基を介して分子内ジスルフィド結合を形成することによってCaMKPが可逆的に不活性化することを見出すことができたため、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、CaMKPが酸化還元によって活性制御を受ける意義について中心的に解析を進める。また同時に、大腸菌ツーハイブリッドシステムを用いたスクリーニングで、CaMKPのN末領域に結合するタンパク質としてPcdhgc5を同定した。Pcdhgc5はin Vitroで直接CaMKPの活性に影響を及ぼすことはないという結果が得られているので、以下の点に着目して研究を進める予定である。スクリーニングで得られたPcdhgc5の細胞質ドメインにはCaMKsによるリン酸化コンセンサス配列R-x-x-S/Tが複数存在しており、実際にCaMKsによってリン酸化されることも確認できた。よって本研究では、「Pcdhgc5が足場となってCaMKPとCaMKsが複合体を形成し、お互いリン酸化、脱リン酸化することでそれぞれを制御し合っているのではないか?」という可能性について、1, リン酸化部位の同定、2. リン酸化部位特異的抗体の作製、3, 共発現させた時の局在変化やそれに伴うCaMKPの機能変化(細胞内ターゲティング、基質特異性、安定性など)に関しても検討を重ねたい。
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Research Products
(1 results)